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エピローグ【凛の話4】

何かあった?

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私は、リビングからキッチンに向かった。

「理沙ちゃん、何か飲む?」

「何でもいいよ」

「私の家、カフェインレスばっかりだけどいいかな?」

「全然いいよ!」

「なら、コーヒーいれるね」

「うん、ありがとう」

私は、電気ケトルに水を入れてスイッチを押した。沸く間に、私は水を飲んだ。
その間に、マグカップを2つ取り出してドリップを乗っける。
カチッ、その音が響いて電気ケトルを取ってマグカップにお湯を注いだ。トレーにマグカップ2つと砂糖とミルクとスプーンをのっけて持っていく。

「はい」

「ありがとう」

理沙ちゃんは、そう言ってニコニコ笑ってくれる。
私は、ダイニングの椅子に座る。

「凛ちゃん、それ焼きたてだから食べよう」

そう言われて、袋を開いた。

「クロワッサン?」

「そうそう!焼きたてなの」

「いただきます」

「どうぞ」

私は、クロワッサンを食べる。サクッとしてモチッとしてほのかに香るバターが鼻腔をくすぐる。涙がブワッといっきに溢(あふ)れて流れ落ちた。

「凛ちゃん、大丈夫?」

理沙ちゃんは、鞄からハンカチを取り出して私に差し出した。

「ごめんね、美味しくて」

その言葉に理沙ちゃんは、「嘘つかないで」と言った。

「理沙ちゃん」

「何かあった?」

私は、気付くと理沙ちゃんに加奈ちゃんの話をしていた。

そして、「あっちには私はいけないんだよ」と子供みたいに泣いていた。

「凛ちゃん、辛かったね」

理沙ちゃんは、立ち上がると私の隣に座って背中を擦ってくれた。

「ごめんね。私、まだ全然」

乗り越えられてなどなかった。

「いいんだよ!仕方ないじゃん。欲しいものは、欲しいでしょ?」

「ものじゃないから、買えないから」

「わかってるよ!そんな事。理沙だって」

「ごめんね。責めてるわけじゃないの」

理沙ちゃんは、私の涙を優しく拭ってくれる。

「凛ちゃんは、たくむんといたら忘れられた?」

私は、その言葉に頷いていた。

「でも、龍次郎さんとこの家に戻ったら欲しくなっちゃうんだよね」

「そうだね」

「不思議な魔法がかかってるみたいだね」

理沙ちゃんは、そう言って私の頭を撫でてくれる。

「魔法じゃなくて、呪いじゃない」

私の言葉に、理沙ちゃんはニッコリ微笑んだ。

「呪いじゃないよ!魔法だよ。赤ちゃんが欲しくなる魔法だよ。いつか、理沙が解いてあげます」

「本当に?」

私は、理沙ちゃんに笑った。

「凛ちゃんが笑ってる顔が、理沙は一番好きだよ」

「理沙ちゃん」

「凛ちゃん。理沙ね」

「うん」

「凛ちゃんには幸せでいて欲しい」

そう言った理沙ちゃんの顔が曇っていく。

「どうしたの?何かあったの?」

理沙ちゃんの目に涙がたまっていくのがわかる。

「優太がね」

「うん」

「優太の母親が…」

「うん」

「SNOWROSEのメンバーの色々を売ったんだって」

「えっ?」

私は、理沙ちゃんの言葉に固まっていた。SNOWROSEのメンバーの色々とはいったい何なのだろうか?

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