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エピローグ【凛の話4】

拓夢と龍ちゃんからのメッセージ

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スマホを見つめて拓夢にメッセージを送ろうと思っては、ホームボタンを押す。

それを、何度も何度も繰り返していた。

理沙ちゃんからのメッセージは、もう来なくなって…。きっと、まっつんさんが帰宅したんだと思った。

「はぁー」

大きなため息を一つついて、私は布団にゴロリと寝転がる。

龍ちゃんの元に帰ってきたら、拓夢に連絡をしたくてしかたなかった。

ブー、ブー

私は、スマホを開いた。

【写真、もらったから!あげるよ】

そう言って、拓夢が送ってきたのは金魚鉢にキスをしてる私と拓夢だった。

「綺麗」

私は、その写真を指でなぞる。涙が流れてくる。

ブー、ブー

【まだデビューしてないから!いつでも、連絡していいから!俺は、今帰ってきたとこ】

【お帰り】

私は、それしか送れなかった。拓夢の声を聞いちゃったら、泣いちゃう。

だから、無理だよ。

番号を出して、発信ボタンを押そうとしてはやめるのを繰り返していた。

ブブ

私は、その音にスマホを見つめる。

私は、嫌な予感がして見るのをやめる。
やってきたのは、SNS通知だった。

もしかして、雪乃かも知れない。嫌、別の誰かかも…。

また、赤ちゃんが欲しくなっちゃう。

頭の中をもう二度と真っ白に出来ないのに…。なのに、こんなのみたくない。

ブー、ブー

【めちゃくちゃ綺麗だから、もらっちゃった】

そう言って、拓夢が写真を送ってくる。

「みんなで、撮ったやつだ」

SNOWROSEのメンバーと理沙ちゃんと私の写真だった。
私は、その写真を見ながら泣いていた。
楽しかった。
ずっと、ここにいたいぐらい楽しかった。
龍ちゃんと過ごしたいのに、また赤ちゃんが欲しい気持ちがやってくる。

「怖いよ。龍ちゃん、拓夢。私、怖い」

こんなに幸せな日々から、絶望に落ちていきたくない。

ブー、ブー

【先に、歯磨いていい?】

龍ちゃんからのメッセージがやってきた。スマホの画面が涙で滲んでいく。

【うん】

私は、それだけを送った。

【じゃあ、先に磨かせてもらうから!凛、泣いてなかったらいいけど…。大丈夫かな?】

私は、そのメッセージに泣いていた。
龍ちゃんは、ちゃんと私の事を見てくれている。そんなのずっと知っていた。

そんな事わかっていたのに…。

わかってるのに…。

どうして、私は龍ちゃんを裏切っちゃったのかな…。

【凛が笑えるなら、それだけで俺は幸せだよ!凛が笑顔になれる事を沢山して欲しい】

【ありがとう】

私は、龍ちゃんにそうメッセージを送った。

ブー、ブー

【凛が幸せな気持ちで過ごせる日が沢山くるように…。出来る事をしたいよ】

拓夢からのメッセージに泣いていた。

私、龍ちゃんにも拓夢にも大切にされてる。それだけで、充分なはずなのにね…。私は、スマホを抱き締める。

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