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エピローグ【凛の話4】

龍次郎の存在

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「あー、美味しかった」

龍ちゃんは、泣いてる理由を聞かなかった。

「ごちそうさまでした」そう言って、手を合わせている。

「片付け、やっとくから!」

お皿を下げようとする龍ちゃんに、声をかける。

「ありがとう!じゃあ、俺、部屋にいるわ。ビール、部屋で飲んでいい?」

私は、龍ちゃんに気を遣わせている。

「待って、私がすぐに二階に」

「いいって!ゆっくり食べてよ。俺が行くから」

龍ちゃんは、そう言って部屋に行ってしまった。龍ちゃんがいれてくれた泡の消えたビールを口にした。

私、龍ちゃんに気を遣わす為に帰ってきたの?

椅子にかけてある鞄から、スマホを取り出した。

【凛ちゃん、ついたよ!また、ゆっくり話そうね】

理沙ちゃんからのメッセージにホッとして、返事を返す。

私は、龍ちゃんみたいになれない。

勝手に家出して、真実(ほんとう)か嘘かわからない友人宅にいると連絡をうけた相手を、優しく迎え入れるなんて出来ない。

どうして、龍ちゃんには、それが出来るの?

龍ちゃんの存在が、どんどんどんどん大きくなるのを感じる。

今さらだけど、私、龍ちゃんの奥さんをちゃんとやり直したい。

許されるのなら、皆月龍次郎と一緒に年を重ねていきたい。

私は、シチューとパンを急ぎながら食べた。龍ちゃんが持ってきたトレーにお皿をいれてキッチンに持っていく。

シンクにお皿を置いてから、食器を洗い出す。カチャカチャと音が鳴る。それを見つめながら、拓夢に抱き締められながら洗ったのを思い出す。

私の頭の中は、厄介だ。拓夢といたら、龍ちゃんを想って、龍ちゃんといたら拓夢を想うのだから…。

そんな事を考えてるとお皿を洗い終えた。

とりあえず、龍ちゃんの為にも二階に上がってあげなくちゃ!シチューの鍋は、まだ温かく。冷蔵庫にうつせそうにないのでやめた。

私は、ダイニングテーブルにもどってビールを飲み干す。グラスを下げて、軽く水でゆすいだ。「お水をいれて、コップを持って二階に上がろうかな」そう口に出していた。

私は、ダイニングテーブルにかけてある鞄にスマホをいれて、お水とコップをとって二階に上がっていく。

二階について、龍ちゃんにメッセージをする。

【二階にあがりました】龍ちゃんから、【わかった】とだけメッセージが届いた。

「もっと、優しくなれないかな」私は、龍ちゃんのメッセージを見ながら呟いていた。

龍ちゃんのように、優しくなれたら違うのにと思う。妊活の日々を重ねて、私はとんでもなくワガママな人間になった。それと、人に優しく出来なくなってしまった。揺れ動く不安定な心では、誰かに優しくなど出来なかった。それが出来たら、私は神様になっている。

ブー、ブー

私は、バイブ音にスマホを見つめる。

【パン、めちゃくちゃ美味しい!凛ちゃん、教えてくれてありがとう】理沙ちゃんからメッセージがきた。

理沙ちゃんと友人になれてよかった。そうじゃなかったら、私は、鬱々とした闇に引き込まれていきそうだったから…。

    
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