上 下
440 / 646
エピローグ【凛の話4】

久しぶりの我が家…

しおりを挟む
電車がやってきて、乗り込む。付き合っていた時のドキドキした気持ちがやってくるのを感じた。私、龍ちゃんに会いたいんだと思った。最寄りの駅には、すぐについた。食パンを買ったから、シチューを食べたい。改札を抜けて、私は、凛君の働いてるスーパーに寄ってしまった。

よかった。凛君は、今日はいなかった。私は、シチューの材料を素早くかごに入れてレジに向かった。

「ありがとうございました」

店員さんの声に、お会計をして袋をつめてスーパーを出た。もしかしたら、龍ちゃんは何か食べてるかも知れない。そう思いながらも、家路を急ぐ。

見慣れた道、当たり前に通り続けた場所、大好きなあの家への道のりに罪悪感が花を添えるようについてきてるのを感じる。

家の近くに来たけれど、誰にも会う事はなかった。私は、鍵を開けて入る。龍ちゃんの靴は、ないようだった。

「ただいま」
荷物をいったん玄関に置き、鍵を閉めた。鞄から、スマホを取り出した。メッセージを送るのは、何か違う気がしてやめた。スマホをしまってから、家に上がる。変わらない匂い、変わらない景色。

私は、キッチンに食材とパンの紙袋を置く。いつものように、ダイニングの椅子に鞄を引っ掻けて、当たり前みたいに洗面所で手を洗ってルームウェアに着替える。今、着ていた服を脱いだ。拓夢が買ってくれた紙袋には冬物の服が入っている。

「明日、洗おう」

紙袋の中に、スーツも畳んで入れる。とりあえず、いったん置いとく。私は、洗面所から出て…。私は、庭を見る。洗濯取り込まなきゃ!龍ちゃんの洗濯物を取り込んで、畳んだ。案外、私、嘘つきなのかも知れない。

そう思いながら、キッチンに向かった。また、バター忘れてる。私は、冷蔵庫を開ける。

「寿司?」

お寿司の入れ物が入っている。蓋を開けると中には、まだお寿司が残っていた。昨夜の晩御飯かな?私は、蓋を閉めてからバターを取り出す。まだある!大丈夫。

手際よく、玉ねぎやじゃがいもや人参の皮をむいた。それら食材を一口大に切って、鍋に入れる。シーフードミックスのあさりのはいったやつを使う。この食パンには、それが合うと思ったからだった。どうしよう。何て話そう。おかえり!何て、軽く言うのも違う気がする。私は、じゃがいも、人参、玉ねぎが煮えるまで待つ事にした。

5分ほどした頃だった。
ガン、ゴン、ドンドン。凄い音が響いてくる。何!泥棒?
私は、怖くなって包丁を握りしめる。どうしよう。泥棒だったら、キッチンの扉が開いた。龍ちゃんだった事に、ホッとした。私が、包丁を置こうとした時だった。

「俺を殺そうとしてる?」

皆月龍次郎の優しい笑顔に、私の緊張はいっきにほぐれた。涙がスッーと目尻から流れるのを感じた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話

水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。 相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。 義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。 陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。 しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。

麗しのラシェール

真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」 わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。 ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる? これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。 ………………………………………………………………………………………… 短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。

売れ残り同士、結婚します!

青花美来
恋愛
高校の卒業式の日、売り言葉に買い言葉でとある約束をした。 それは、三十歳になってもお互いフリーだったら、売れ残り同士結婚すること。 あんなのただの口約束で、まさか本気だなんて思っていなかったのに。 十二年後。三十歳を迎えた私が再会した彼は。 「あの時の約束、実現してみねぇ?」 ──そう言って、私にキスをした。 ☆マークはRシーン有りです。ご注意ください。 他サイト様にてRシーンカット版を投稿しております。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

処理中です...