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エピローグ【拓夢の話3】

離れ離れの車内

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「きたきたー」

階段をおりるとすぐに理沙ちゃんの声が聞こえた。凛と二人で、電車に乗ってしまった。

「理沙が連れて行っちゃったな!」

まっつんは、その光景を見つめながら申し訳ない顔をして俺を見つめた。

「いいんだよ」

俺とまっつんは、降りてすぐの車両に乗り込んだ。

「なぁー。拓夢」

プシュー

電車が、動き始める。

「何?」

「デビューするわけだから、わだかまりは失くさなくちゃな」

「わだかまり?」

「俺の母親の事だよ」

ガタンゴトン、電車が大きく揺れて俺は、倒れそうになった。

「大丈夫か?」

「うん、ごめん」

俺は、まっつんに支えられた。まだ、車内には人はまばらだった。

「一つだけ、真実を言うよ」

まっつんは、扉しか見ていなかった。

「うん」

喉から心臓が飛び出そうって、この事なんだと思った。

「拓夢と母親(あのひと)の事を知ったのは…。母親(あのひと)と付き合っていた男が会いに来たからだよ。智と二人で、いつもの場所にいた日に…」

まっつんは、そう言った。窓にうつるまっつんの顔しか俺は見れなかった。まっつんの眉毛が寄っている。

「音声も写真も、実は見てるんだ」

「まっつん」

「これ以上は、思い出したくないからごめん」

まっつんは、そう言って目を伏せた。

「俺……」

「何も言わなくていい!ただ、俺は知っている。知っていながら、黙認し続けてきた。その意味わかるよな?」

「バンド続けたかったから…」

「バアーカ!ちげーよ!」まっつんは、そう言って振り返った。

「まっつん」

「拓夢と友達でいたいからに決まってんだろ!」

まっつんは、そう言って俺の頭をガシガシ撫でてくる。

「痛いよ」

「拓夢、お前は優しい奴だから!どうせ、断れなかったんだろ?でもな、これからは優しく生きていたら足元掬われる。俺等は、そんな世界(ばしょ)に行くんだ」

まっつんの真剣な眼差しに俺はうんと頷いた。

「だから、拓夢。もう優しさは捨てろ!凛さんにちゃんとあげてきたんだろ?気持ちと一緒に…」

まっつんは、自分の胸をポンポンと叩いた。

「まっつん、俺。この先、凛以外を愛する事は出来ない。だから、まっつん」

「わかってるよ!何が起きても一番の味方は俺とかねやんとしゅんだって忘れんなよ」

まっつんは、俺の背中を叩いた。

「ピシッとしとけ!拓夢は、胸張って生きてりゃいいんだよ」

「ありがとう、まっつん」

俺は、まっつんが知っている事を知った。それでも、まっつんは俺を許してくれた。その気持ちだけで、俺は、充分だった。

「次だな!」

「うん」

「頑張ろうな!」

「うん」

まっつんは、俺にグーを差し出してきた。俺もグーを作って、まっつんの手にタッチした。
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