上 下
423 / 646
エピローグ【拓夢の話3】

俺を全部食べられたい

しおりを挟む
「ごめん、鍵。鞄にあるから、開けてくれる?」

「うん」

家の前について、俺は凛にお願いした。

「ほしーむらさん」

お隣の伴さんが、出てきた。

「こんばんは」

凛も会釈をしている。

「かーのじょ?わー、キレイ!ビックリです」

伴さんは、凛を見つめながら驚いたように目を見開いた。俺は、それが何だか照れくさかった。

「今から、ラブラブですか?」

「えっ、いや、ご飯です」

俺は、そう言って苦笑いを浮かべた。

「そうですか!そうですか!私は、仕事ね!あっ!ほしーむらさん。これわたしてって」

そう言って、俺は伴さんから茶色の封筒を受け取った。

「ありがとうございます」

「はいはーい。バイバイ、かのじょ」

「はい」

「かわいーね!かわいー、いいね、いいね」

伴さんは、凛を見つめながらニコニコ笑っていなくなった。

「面白い人だね」

凛は、そう言ってニコニコ笑って鍵を開けてくれる。

ヤバい、俺は隣人に焼き餅妬いてる。

凛が開けてくれて、中に入る。

「凛」

「何?」

「ヤバい、俺。焼き餅妬いてる」

俺は、紙袋とスーパーの袋を玄関に置いた。
玄関の鍵を締める。

「焼き餅妬いてるの?さっきの人に?」

凛は、そう言って俺を見つめる。

「そう、駄目だよな。俺、駄目だよな」

俺は、そう言って凛を引き寄せる。

「拓夢、玄関だから」

「前も、玄関だっただろ?」

「そうだけど」

さっきから、凛への独占欲が止められない。心臓(むね)の高鳴りが止められない。

「凛の中に、全部丸ごと入りたい。俺を全部食べてよ。凛」

涙が止まらなくなる。

「凛を誰にも取られたくない。これ以上、誰かに見つけられたくない。お願いだよ、凛」

俺の涙を凛が指で拭ってくれる。

「食べてあげようか?」

「凛……どうやって」

「ここだよ!それに、ここに」

凛は、そう言って俺の下半身に手をあてて唇に唇をゆっくり重ねてくる。

さっき渡された手紙が床に落ちる。

「んっ、んっ」

俺は、凛の口に舌をねじ込んでいく。凛は、背中に回した手で服をギュッと掴んでくる。

押さえていた気持ちが溢(あふ)れ出す。凛は、さらに俺のを握りしめてくる。

ヤバい、凛の中に全部入りたい。早く入って、吐き出してしまいたい。

唇をゆっくり離した。

「手紙落ちたよ」

凛は、蕩けた顔を向ける。

「そんなのいいよ!吐き出したい。凛の中に、全部出したい」

「したいって事?」

俺は、ゆっくり頷いた。

「いいよ。なおしたら、しよう」

そう言って、凛は俺の頬を撫でてくれる。

「凛を食べたい」

「いいよ」

凛の目から、涙が流れ落ちてくのが見える。
俺は、凛の全てを飲み干して胃袋におさめてしまいたい。
俺も、凛に胃袋におさめられたい。

「冷蔵庫にしまってくるね」

凛は、そう言って、ビニール袋を取ろうとする。

「俺が持つよ」

俺は、買い物袋と紙袋を持った。

「ありがとう」

「うん」

リビングに持っていく。

「しまうね」

「ありがとう」

凛は、袋を俺から取って冷蔵庫にしまってる。自分が、こんなにも、焼き餅を妬く人間だなんて思わなかった。俺は、さっきの手紙の中身を開いた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】旦那様、お飾りですか?

紫崎 藍華
恋愛
結婚し新たな生活に期待を抱いていた妻のコリーナに夫のレックスは告げた。 社交の場では立派な妻であるように、と。 そして家庭では大切にするつもりはないことも。 幸せな家庭を夢見ていたコリーナの希望は打ち砕かれた。 そしてお飾りの妻として立派に振る舞う生活が始まった。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

アリーチェ・オランジュ夫人の幸せな政略結婚

里見しおん
恋愛
「私のジーナにした仕打ち、許し難い! 婚約破棄だ!」  なーんて抜かしやがった婚約者様と、本日結婚しました。  アリーチェ・オランジュ夫人の結婚生活のお話。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

処理中です...