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エピローグ【拓夢の話3】

ネクタイを選んでもらう

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凛は、俺の表情に気づいているようだった。

「何色がいいかな?拓夢は、何色が好き?」

気にしないようにしているのがわかる。

「そうだなー。何色かな?」

俺は、皆月龍次郎(そのひと)の存在を書き消すように話す。会った事も見た事もない、皆月龍次郎(かれ)は俺の中で凄く大きな存在で、聳え立つ塔みたいで…。乗り越える事が出来ない人に感じている。
俺は、ネクタイを手に取りながら、平気なフリを繰り返す。本当は、今にも泣きそうな気持ちを抱えていた。

「ピンクは、違うし。ボルドーも違うよねー。これは、違うかな」

凛は、そう言いながらネクタイを見つめてる。今、この瞬間は、俺の為に凛が時間を使ってくれてる。

それだけで、充分なのに…。

これ以上、望んじゃいけないのに…。

それでも、凛が俺の為に使ってくれる時間が嬉しくて堪らない。

「これは?」

「何か、ガラガラって感じじゃない」

「だよね…。うーん」

凛は、顎に手を置いて悩んでる。俺は、凛を今すぐに抱き締めたかった。凛が、俺の為に悩んでくれる。今の凛の頭の中は、俺しかいない。

そう思うだけで、愛しくて愛しくて堪らない。

「スーツ、先に選ぼうか?」

「そうだね」

俺は、凛と一緒にスーツを見に行く。

「拓夢は、こんなのとか似合うかも!これとか、これもよさそうだね」

そう言って、凛は満面の笑みで俺を見つめた。ドクン、心臓(むね)の高鳴りを感じる。凛が、好きだ。愛してる。早く家に帰りたい。

抱き締めたい。キスしたい。
頭の中を渦巻く感情(きもち)。

駄目だ。何も、集中できない。

「これは、どうかな?」

俺は、それを手に取った。

「これにする」

「えっ?もう、決めちゃうの?」

凛は、驚いて俺を見つめる。

「八時までだろ?早く決めなきゃ!」

俺は、ストライプの入ったスリーピーススーツを手に取った。

「それで、いいの?他の柄とか色とか」

「いいよ!」

俺は、ネクタイを選びに行く。

「どれがいい?」

凛は、オレンジ色のネクタイを持った。

「どれかなー」

「それでいい」

「これ?」

「うん」

俺は、そのオレンジのネクタイを掴んだ。

「似合うよ!拓夢は、お日さまみたいだから」

「何それ?」

「私にとって陽だまりみたいだよ」

その笑顔に、「これにする」俺はそう言って笑った。

「後は、凛のスーツだな」

俺は、女性の売場に凛を連れていく。

「どれにする?」

「どれにしようかな」

「黒は、却下」

俺は、凛にそう言った。

「白いジャケットより、このグレーが入ってる方がいいに決まってるよね」

凛の言葉に、俺は白のジャケットがついてるスーツをを手に取った。

「これに決定」

「駄目だよ!」

凛は、慌ててる。

「じゃあ、俺も白が入ってるジャケット買うから…。そしたら、恥ずかしくないだろ?」

俺は、凛の顔を優しく覗き込むように見つめる。

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