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エピローグ【凛の話3】

やっと、繋げた…

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電車が出発する。

「どれくらいかかるかな?」

「わからない」

「一時間は、かかるかなー」

「それぐらいかかった気がする」

「理沙ちゃんと行ったんだっけ?」

「うん」

どんどん駅が、通りすぎていく。

「最初出会った時に、あの駅で降りたのは何で?」

「あー。用事があったから!」

「そうだったんだね!」

「うん。あの時は、あの駅で降りたかったんだよね」

「思い出だったの?」

拓夢は、懐かしそうな顔をしてる。

「智とあの場所で約束したんだよ!絶対メジャーデビューしようなって!だから、あの駅で降りたんだ…。でも、行ったら惨めになるだけだった」

そう言った後だった。拓夢は、私の手をそっと握った。

「もう、ここまで来たら大丈夫だろ?」

「そうだね」

私達の住む街から、何駅も過ぎていた。私も拓夢の手をギュッと握りしめた。ずっと、こうしたかった。やっと繋げた。

「やっと繋げたな」

「うん」

「ずっともどかしかった。凛も?」

「そうだね」

「触れるか触れないかで、ずっといるの辛いな」

「そうだね」

「だってさ、俺。この手を知っちゃってるから…」

そう言って、拓夢はさらに私の手を強く握りしめてくる。確かに、そう…。私と拓夢は、この手の温もりを知ってる。

「ずっと、こうしたかった」

私の言葉に拓夢は、頷いてくれる。

プシュー

電車が駅に停まる。同じ車両にいた数人が降りて行く。私と拓夢だけが、残った。

「みんな降りちゃったから、逆によかったな」

そう言って、拓夢は笑った。

「二人きりだね」

「だなー。貸し切りみたい」

「うん。何か、嬉しい」

扉が閉まって走り出す。拓夢は、手を離して私の腰に手を回す。

「二人だから、いいかなーって」

「駄目でしょ?」

「キスぐらいする?」

「だから、駄目だって」

バカなカップルになったみたいで楽しい。

「たまにいるだろ?周りが見ててもキスとか触り出したりとかするやつ」

「うん。いる」

「あんなんには、なりたくないし。ならないって思ってたけど…。今は、なりたい」

「どうして?」

「高校生とか二十歳なら出来ただろうけど…。27にもなったら、出来ないだろ?それに、デビューしたらもっと無理だから…。今だけしたら、駄目かな?」

「大人はしないよ」

「だったら、今は、大人にならなくていい」

そう言って、拓夢は私を引き寄せて抱き締める。

「駄目だよ」

「誰もいないから!一回だけ」

「駄目だって」

「お願い」

そう言われて、私は拓夢にキスをされた。ドキドキする。今まで、こんな事した事ない。公共の場所で、何してるんだろう?

「嫌だった?」

「当たり前だよ」

「バレなかっただろ?」

「誰もいないから」

「凛、見て」

そう言って、拓夢は自分の胸に私の手を当ててくる。

「どっちがドキドキしてるかわからない」

私の言葉に拓夢は笑って言う。

「凛も同じ気持ちで嬉しいな」

そう言って、頭を優しく撫でてくれる。さっきより距離が近づいて嬉しくて幸せ。

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