上 下
544 / 646
エピローグ【凛と拓夢の話】

拝啓、星村拓夢様…【拓夢】

しおりを挟む
手紙を広げると…。

拝啓 星村拓夢様。最初の一行はその言葉から始まっていた。

突然手紙を書いて持ってきてしまいました。星村さんは、こちらにはもういないとはわかっていながら、もしかするとを期待して持ってきました。
いつか、星村さんがこの手紙を読んだ時。もう一度だけ、妻の凛に会ってはもらえないでしょうか?

その言葉に、皆月龍次郎さんがこの手紙を持ってきたのだと気づいた。俺は、手紙を読み進める。

凛には、言わないで欲しいと頼まれている事が二つあります。一つは、星村さん達と撮影をした3日後の出来事です。あの日、凛は蓮見に脅されました。口で奉仕する事を要求されていました。そう、俺が星村さんに会いに行った日です。俺は、蓮見の娘から送られてきたメッセージで、その場所に向かいました。駅で、松田君と理沙ちゃんに会いました。蓮見は、刃物を使い凛を脅していました。俺は、これ以上凛の人生が壊されたくないと思ったのです。

皆月龍次郎さんは、蓮見と凛の事を詳しく知っていた事を、その言葉で俺はわかった。そして、まっつんと理沙ちゃんを口止めしたのは凛だという事、蓮見が捕まった事も手紙に書いていてわかった。そして、俺は次の手紙を捲る。

二つ目は、その次の日に美沙さんと言う女性に会いに行った事です。

美沙が、凛に…。

凛は、一人では会いに行けなかったから理沙ちゃんと一緒に行ったそうです。美沙さんから、色々言われたらしいです。ただ、その色々を私には教えてはくれませんでした。どうか、もう一度だけでいい…。凛に会って、凛の痛みや悲しみを拭ってあげてもらえないでしょうか?

俺は、龍次郎さんからのお願いを受け取った。

プルルー、プルルー

『もしもし』

「凛、会おうか?」

『無理だよ』

「待ってるよ!俺の部屋で…」

『今から……?』

「今からおいで」

『無理だよ!そんな事出来ない』

「何かあったんだろ?」

『何もない。何もないから…。拓夢は、元気で頑張って』

「来なくてもいいから、待ってる」

『無理だよ!行けない。もう、そう言うのは駄目だよ』

「待ってるよ」

『拓夢、駄目だって…言ってるでしょ?』

「それでも、待ってるから…。凛が決めればいい」

俺は、凛にそう言って電話を切った。凛の旦那さんが、会って欲しいと言うのなら…。俺は、凛に会いたい。だって、俺の中には、まだ凛がこんなにも溢(あふ)れているから…。

凛が、悲しんでるなら…。俺は、抱き締めてあげたい。

沢山、話を聞いてあげたい。

忘れさせてあげたい。

それを凛が望むなら、俺は全部全部叶えてあげたいんだ。

また、世間に咎められる事になっても…。

ファンが離れてしまっても…。

理解されなくてもいいから、俺は凛の傍にいてあげたい。凛の涙を拭ってあげたい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

裏切りの先にあるもの

マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。 結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

(完結)私はあなた方を許しますわ(全5話程度)

青空一夏
恋愛
 従姉妹に夢中な婚約者。婚約破棄をしようと思った矢先に、私の死を望む婚約者の声をきいてしまう。  だったら、婚約破棄はやめましょう。  ふふふ、裏切っていたあなた方まとめて許して差し上げますわ。どうぞお幸せに!  悲しく切ない世界。全5話程度。それぞれの視点から物語がすすむ方式。後味、悪いかもしれません。ハッピーエンドではありません!

処理中です...