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エピローグ【凛の話3】

拓夢の大丈夫…

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拓夢が、蓮見君にたいして怒ってくれる気持ちが好き。私をちゃんと大切にしてくれてる気持ちが好き。

そして、拓夢の大丈夫は、私の身体中にゆっくりと染み渡っていく。

私は、ずっと愛されない人間だと思って生きてきた。龍ちゃんと出会って、揺るがない愛が存在するのを初めて知った。家族以外で、いなくならない存在がいる事を初めて知った。

それでも、体に刻み込まれたら蓮見君との日々が邪魔をした。幸せを感じる程、あの日々がリアルに蘇っては消えていった。そんな繰り返しをして、私と龍ちゃんは夫婦になった。

私は、キッチンにやってきた。酢豚を作る。

パプリカ、ピーマン、玉ねぎ、豚肉、片栗粉。大人になったら、苦手な野菜を無理には
食べなくなった。食わず嫌いじゃなくて、その野菜がどんな味かを知っていて食べない。

だから、自分に合う人間と合わない人間もわかったフリをして振り分ける。この人は、こんな性格!先入観で、何でも感でも決めつける。昔、私のバイト先のおばさんが派手な髪の色をしてる奴は頭が悪いと決めつけていたみたいに…。

私も、そんな大人になっていく。嫌、もうなってる。

何でも受け入れられて、迷わずチャレンジして、転んで、怪我して、沢山傷ついて、泣いて、怒って、笑って…。あんな風に、生きれるのは子供の時だけ。

大人は、傷つく事に弱い。転んだ怪我の痛みに耐えられない。こんなに泣いてばかりいたら、人生をやめたくなる。私は、パプリカを小さな四角に切っていく。

子供の頃は、転んだら母が手当てをしてくれた。傷ついたら、抱き締めてくれた。泣いていたら、笑顔になる魔法を沢山くれた。だから、生きてこれた。だから、何も怖くなかった。

でも、今は…。

全部、自分で受け止めなくちゃならなくて…。私は、傷口を塞ぐ方法を手探りで探さなくちゃいけなかった。泣いても、泣いても、魔法は現れなかった。

だから、私は傷つかない選択をして、転ばない選択をして、泣かない選択をして…。そしたら、心(ここ)はどんどんどんどん弱くなる。

気づいたら、拓夢がやってきていた。
私は、野菜を揚げる。

私は、キッチンペーパーをちぎって拓夢に差し出していた。
泣かせるつもりは、なかった。

時間は、残酷…。
さっき子供時代を考えていたから、私は口に出す。拓夢と私を置き去りに時間が進んでいく事を…。

拓夢が、話をそらしてくれて助かった。

大人は、すぐに話を変えるって小さい頃は思っていた。

でも、大人になって気づいた。

変えなきゃ生きていけない事を…。

ご飯が出来上がって、私と拓夢は食べる。

拓夢からのデートの提案に私は素直に応じる事は出来なかった。

本当は、凄くデートがしたい。だけど、蓮見君が誰かに雇われてると言っていたから…。
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