391 / 646
エピローグ【凛の話3】
拓夢の大丈夫…
しおりを挟む
拓夢が、蓮見君にたいして怒ってくれる気持ちが好き。私をちゃんと大切にしてくれてる気持ちが好き。
そして、拓夢の大丈夫は、私の身体中にゆっくりと染み渡っていく。
私は、ずっと愛されない人間だと思って生きてきた。龍ちゃんと出会って、揺るがない愛が存在するのを初めて知った。家族以外で、いなくならない存在がいる事を初めて知った。
それでも、体に刻み込まれたら蓮見君との日々が邪魔をした。幸せを感じる程、あの日々がリアルに蘇っては消えていった。そんな繰り返しをして、私と龍ちゃんは夫婦になった。
私は、キッチンにやってきた。酢豚を作る。
パプリカ、ピーマン、玉ねぎ、豚肉、片栗粉。大人になったら、苦手な野菜を無理には
食べなくなった。食わず嫌いじゃなくて、その野菜がどんな味かを知っていて食べない。
だから、自分に合う人間と合わない人間もわかったフリをして振り分ける。この人は、こんな性格!先入観で、何でも感でも決めつける。昔、私のバイト先のおばさんが派手な髪の色をしてる奴は頭が悪いと決めつけていたみたいに…。
私も、そんな大人になっていく。嫌、もうなってる。
何でも受け入れられて、迷わずチャレンジして、転んで、怪我して、沢山傷ついて、泣いて、怒って、笑って…。あんな風に、生きれるのは子供の時だけ。
大人は、傷つく事に弱い。転んだ怪我の痛みに耐えられない。こんなに泣いてばかりいたら、人生をやめたくなる。私は、パプリカを小さな四角に切っていく。
子供の頃は、転んだら母が手当てをしてくれた。傷ついたら、抱き締めてくれた。泣いていたら、笑顔になる魔法を沢山くれた。だから、生きてこれた。だから、何も怖くなかった。
でも、今は…。
全部、自分で受け止めなくちゃならなくて…。私は、傷口を塞ぐ方法を手探りで探さなくちゃいけなかった。泣いても、泣いても、魔法は現れなかった。
だから、私は傷つかない選択をして、転ばない選択をして、泣かない選択をして…。そしたら、心(ここ)はどんどんどんどん弱くなる。
気づいたら、拓夢がやってきていた。
私は、野菜を揚げる。
私は、キッチンペーパーをちぎって拓夢に差し出していた。
泣かせるつもりは、なかった。
時間は、残酷…。
さっき子供時代を考えていたから、私は口に出す。拓夢と私を置き去りに時間が進んでいく事を…。
拓夢が、話をそらしてくれて助かった。
大人は、すぐに話を変えるって小さい頃は思っていた。
でも、大人になって気づいた。
変えなきゃ生きていけない事を…。
ご飯が出来上がって、私と拓夢は食べる。
拓夢からのデートの提案に私は素直に応じる事は出来なかった。
本当は、凄くデートがしたい。だけど、蓮見君が誰かに雇われてると言っていたから…。
そして、拓夢の大丈夫は、私の身体中にゆっくりと染み渡っていく。
私は、ずっと愛されない人間だと思って生きてきた。龍ちゃんと出会って、揺るがない愛が存在するのを初めて知った。家族以外で、いなくならない存在がいる事を初めて知った。
それでも、体に刻み込まれたら蓮見君との日々が邪魔をした。幸せを感じる程、あの日々がリアルに蘇っては消えていった。そんな繰り返しをして、私と龍ちゃんは夫婦になった。
私は、キッチンにやってきた。酢豚を作る。
パプリカ、ピーマン、玉ねぎ、豚肉、片栗粉。大人になったら、苦手な野菜を無理には
食べなくなった。食わず嫌いじゃなくて、その野菜がどんな味かを知っていて食べない。
だから、自分に合う人間と合わない人間もわかったフリをして振り分ける。この人は、こんな性格!先入観で、何でも感でも決めつける。昔、私のバイト先のおばさんが派手な髪の色をしてる奴は頭が悪いと決めつけていたみたいに…。
私も、そんな大人になっていく。嫌、もうなってる。
何でも受け入れられて、迷わずチャレンジして、転んで、怪我して、沢山傷ついて、泣いて、怒って、笑って…。あんな風に、生きれるのは子供の時だけ。
大人は、傷つく事に弱い。転んだ怪我の痛みに耐えられない。こんなに泣いてばかりいたら、人生をやめたくなる。私は、パプリカを小さな四角に切っていく。
子供の頃は、転んだら母が手当てをしてくれた。傷ついたら、抱き締めてくれた。泣いていたら、笑顔になる魔法を沢山くれた。だから、生きてこれた。だから、何も怖くなかった。
でも、今は…。
全部、自分で受け止めなくちゃならなくて…。私は、傷口を塞ぐ方法を手探りで探さなくちゃいけなかった。泣いても、泣いても、魔法は現れなかった。
だから、私は傷つかない選択をして、転ばない選択をして、泣かない選択をして…。そしたら、心(ここ)はどんどんどんどん弱くなる。
気づいたら、拓夢がやってきていた。
私は、野菜を揚げる。
私は、キッチンペーパーをちぎって拓夢に差し出していた。
泣かせるつもりは、なかった。
時間は、残酷…。
さっき子供時代を考えていたから、私は口に出す。拓夢と私を置き去りに時間が進んでいく事を…。
拓夢が、話をそらしてくれて助かった。
大人は、すぐに話を変えるって小さい頃は思っていた。
でも、大人になって気づいた。
変えなきゃ生きていけない事を…。
ご飯が出来上がって、私と拓夢は食べる。
拓夢からのデートの提案に私は素直に応じる事は出来なかった。
本当は、凄くデートがしたい。だけど、蓮見君が誰かに雇われてると言っていたから…。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
先生、生徒に手を出した上にそんな淫らな姿を晒すなんて失格ですよ
ヘロディア
恋愛
早朝の教室に、艶やかな喘ぎ声がかすかに響く。
それは男子学生である主人公、光と若手美人女性教師のあってはならない関係が起こすものだった。
しかしある日、主人公の数少ない友達である一野はその真実に気づくことになる…
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
王妃の私には妾妃の貴女の考えなどお見通し
麻宮デコ@ざまぁSS短編
恋愛
王太子妃となったミリアリアは不妊症であると医者に告げられ嘆き悲しむ。
そんなミリアリアに従妹のクローディアは自分が代わりに王の子供を産むと宣言した。
世継ぎを産み育てる役割だけはクローディアに。
それ以外の役割はミリアリアに。
そして宣言通り、クローディアは王子を出産した。
月日が経ち、ミリアリアは王太子妃から王妃になったが、そんな中で夫である王が急死してしまった。
ミリアリアはまだ年若い王子に王位を継がせずに自分が即位することにし、今まで表に出せなかった真実を露わにしていく。
全4話。
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
50歳前の離婚
家紋武範
恋愛
子なしの夫婦。夫は妻から離婚を切り出された。
子供が出来なかったのは妻に原因があった。彼女はそれを悔いていた。夫の遺伝子を残したいと常に思っていたのだ。
だから別れる。自分以外と結婚して欲しいと願って。
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫
紫崎 藍華
恋愛
政略結婚だったにも関わらず、スティーヴンはイルマに浮気し、妻のミシェルを捨てた。
スティーヴンは政略結婚の重要性を理解できていなかった。
そのような男の愛が許されるはずないのだが、彼は愛を貫いた。
捨てられたミシェルも貴族という立場に翻弄されつつも、一つの答えを見出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる