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エピローグ【拓夢の話2】

凛が好きで好きで仕方ない

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「覚えたてと同じだよ」

俺は、立ち上がろうとする凛を引き寄せる。

「駄目…ご飯作りたい」

「凛、愛してる」

俺は、凛を抱き締める。「愛してる」を繰り返す。それ以外の言葉を俺は見つける事が出来ないでいる。

「ありがとう、拓夢」

「明日は、一日イチャイチャしてよう」

「いいよ」

凛の優しい声が、俺の鼓膜を震わせる。その感覚が、好きだ。俺は、凛を離した。

「ご飯作るね」

「うん」

凛は、ズボンを履いて部屋を出て行った。凛と過ごせるのは、明日一日が最後。撮影が終わったら、凛は真っ直ぐ帰る。俺も、凛を追いかけてなどいけない。

「デビューなんかしなくていいや」

あんなに切望していた願いが変わったのを感じる。

「俺、凛とこの関係続けたかった」

凛が、俺の絶望を埋めた。だから、俺…。

「凛を手放したくない」

心の底から、何度も何度も何度も湧いてくる独占欲…。消そうとすればする程に、その色は濃さを増す気がした。俺は、立ち上がってシャツを着てズボンを履いた。ペタペタとキッチンに向かう。

キッチンでは、凛が楽しそうに料理を作っている。それを見つめながら、俺は凛の一番目には慣れない事を感じていた。

「まだ、かかるから待ってね」

凛が、俺に気づいて声をかけてきた。

「うん。水、飲んでいい?」

「うん」

俺は、蛇口を捻って水を出した。

「拓夢」

「何?」

「明日、どこ行く?」

「俺ね、凛に服を買ってあげたいんだ!安い所じゃなくて…。長く着れる服をプレゼントしたいんだ」

「別に、いいのに…」

「よくない!コートとかは?お気に入りのがあったりする?」

「うん。ある」

「じゃあ、何がいいか考えててよ」

「わかった」

「明日は、俺の服着ればいいよ」

ニコニコ笑う俺を凛は、見つめる。

「この先、拓夢は忙しくなって…。私なんかあっという間に忘れちゃうでしょ?」

「だから、忘れない」

「忘れていいんだよ、拓夢。とどまる必要何てないんだよ。だって、時間は流れていくのが当たり前でしょ?」

凛は、そう言って豚肉を揚げている。俺は、それを見つめる。

時間は、流れてく…。

残酷な程、早く…。

「拓夢、泣いてるの?」

凛は、キッチンペーパーをちぎって、俺に渡してくれる。

「ごめん。時間は、残酷だなって思ったら泣けてきた」

「そうだよね。私や拓夢の心(ここ)の傷は消えないのに、歳はとっていくんだもんね。心(ここ)は、あの頃を思い出して苦しんだままなのにね。時間って、残酷だよね。心(ここ)を置き去りにしたまま進んでいくから…」

そう言って、凛は胸に手を当てている。俺は、その言葉に頷いただけだった。いくら時間が流れても消えない傷を抱えたままだ。大人になるだけで、消えてくって信じてた。でも、違った…。ただ、俺も凛も消えたフリをしてただけに過ぎなかった。
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