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エピローグ【拓夢の話2】

お腹すかない?

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「大丈夫、大丈夫」

俺は、凛の耳元で囁く。子供の頃、母親がこうやって言ってくれるだけで安心したのを思い出した。

「拓夢、これから先も私の味方でいてくれる?」

「当たり前だろ!」

「有名になっても、時々でいいから…。私と電話してくれる?」

「電話じゃなくて、会いに行くよ」

「無理しないでいいから…。そんな事したら、記事にされちゃうかもしれないから」

背中に流れ落ちてく涙を感じる。凛が、凄く泣いてるのがわかる。俺は、凛の肩にキスをする。

「拓夢」

「凛を抱けなくなるのは、本当は嫌だ。有名になって、この家から引っ越して、凛と過ごした時間がどんどん過去になっていって…。俺は、誰かと付き合って…。凛を刻み込んだのを忘れてく。そんなの、本当は嫌だ」

俺の涙が、凛の背中に流れていくのが見える。

「もっと、続けたら…。私達、きっと戻れなくなっちゃってたよ。だから、今ぐらいが、丁度いいんだよ」

そう言って、凛は俺の肩にキスをしてくれる。俺だってわかってる。これ以上、凛との日々を重ねていけば、後戻りが出来なくなってくって…。それは、凛じゃなくて、俺が…。俺が、もっと凛を離したくなくなっていく。

「凛、忘れないで!凛は、自分が思ってるより魅力的な人だって事を…。子供が出来なくても、歳を取っても、そんなの関係ないぐらい凛は、素敵な人だから…。その事を忘れないでいて」

「拓夢」

「だから、凛。自信を持って生きていって」

俺は、凛の肩にキスをする。平田さんぐらいだったら、俺は凛にたくさんキスマークをつけただろう…。凛は、俺のものだって、旦那さんに見せつけてやりたかっただろう。そんな事、俺は絶対にしない。だって、凛が悲しむ事はしたくないから…。

「凛、愛してるよ!凛よりも愛する人が見つからない限り。ずっと、ずっと、愛してる」

俺は、凛から離れて顔を覗き込む。

「拓夢」

涙で濡れてる顔を見つめてから、唇に唇を重ねる。今の俺には、凛しかいらない。でも、それは今で…。先の事なんて、わからない。
今はこうして、ただ凛を身体中に刻み付けていたい。唇をゆっくり離した。

「お腹すかない?」

「確かに…。ちょっと減ったかな」

「酢豚作ってあげる」

「今日、酢豚?」

「うん」

「食べる!凛の酢豚食べる」

俺は、そう言って凛をギュッと抱き締める。

「作るね」

「うん」

凛は、俺から離れてブラジャーを手に取る。

「いらないだろ?」

「でも…」

「家では、つけてないんだろ?」

「うん」

「じゃあ、いらない」

俺は、そう言って凛のブラジャーを取り上げた。凛は、「わかった」と言ってTシャツを着る。Tシャツから、凛の胸の形がわかる。俺は、それに手を伸ばす。

「拓夢、ご飯作るから」

「今で、こんなだから…。昔の凛は、どんなんだったんだろう」

「もう、覚えたてじゃないんだから」

凛は、そう言って立ち上がろうとする。
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