上 下
375 / 646
エピローグ【拓夢の話2】

許されない事だから…

しおりを挟む
凛がお風呂から上がるのを見届けてから、俺は風呂椅子に腰かける。髪にシャンプーを落として洗う。あの時、凛に言った言葉は…。ある映画の話だった。何それ?って聞かなかったって事は凛もその映画を見ていたのがわかった。

敢え無くなるまで苦しみで罪を贖っての意味がわからなくて俺は調べたのを覚えてる。その言葉の意味を理解出来たのは、凛とこうなってからだ。

これは、俺の罪だ。髪を洗って、体を洗って、俺はお風呂から上がった。バスタオルで、体を拭いてパンツを履く。適当にTシャツとズボンを履いて髪を乾かす。

昔、不倫は純愛だとか言って叩かれまくったアナウンサーがいたのを思い出した。彼は中絶をさせた事がバレて、「何が純愛だ」と世間に叩かれまくっていなくなった。ドライヤーで、髪を乾かしながら俺は鏡を見つめる。俺だって同じだ。純愛ではない。やる事は、しっかりやってる。ドライヤーをとめる。スプレータイプの化粧水を顔にかける。

世間は、俺を許さないだろうな!パンパンと肌に馴染ませてから、洗面所を出てキッチンに向かう。

「それでね」

「うん」

どうやら、理沙ちゃんが来てるようだった。俺は、扉を開ける。

「いらっしゃい」

「あー、たくむん。何か二人、同棲してるみたい」

理沙ちゃんは、そう言ってニコニコ笑ってる。

「ちょっと違うかな」

俺は、そう言ってキッチンに行くと蛇口を捻って水を飲んだ。

「たくむんいるって、知らなかった」

「あー、部屋に行くから」

「別に、邪魔だって言ってないよ!ケーキ二人分しかないの」

「気にしないでよ」

理沙ちゃんと初めて話した時、俺は理沙ちゃんの話し方や言葉や温度で、この子とは、友達になるんだろうなって思ったのを思い出した。

「コーヒーいれるよ」

「いいの?嬉しい」

「うん」

俺は、お湯を沸かす。

「俺は、気にしないで!二人で話して」

「ありがとう」

そう言うと、理沙ちゃんは凛を見つめていた。

「結局、蓮見さんだっけ!あの子が、私と優太の事を知ってるのはおかしいんじゃないかって、優太が話してね」

「うん」

「平田君に連絡を取って、蓮見さんに会わしてもらうべきじゃないかって優太が言うの!どう思う?」

凛は、理沙ちゃんの言葉に顎に手をあてながら考えている。俺は、お湯が沸いて、二つのカップにコーヒーをいれてからお湯を注ぐ。砂糖とミルクとコーヒーをいれたカップ二つとスプーンを凛が買ってきたトレーにのせて持っていく。

「ゆっくりして」

「たくむんは?聞かないの?」

ピンポーンー

「ちょっと待って」

俺は、理沙ちゃんにそう言ってインターホンに出る。

「はい」

「管理人ですが」

「あっ!はい。今、行きます」

俺は、インターホンを切った。

「ごめん。チェーン直しに管理人さんが来たから!二人で話してて」

「チェーンなんか、壊れるの?」

理沙ちゃんは、不思議そうな顔をして俺を見つめて言った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

先生、生徒に手を出した上にそんな淫らな姿を晒すなんて失格ですよ

ヘロディア
恋愛
早朝の教室に、艶やかな喘ぎ声がかすかに響く。 それは男子学生である主人公、光と若手美人女性教師のあってはならない関係が起こすものだった。 しかしある日、主人公の数少ない友達である一野はその真実に気づくことになる…

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫

紫崎 藍華
恋愛
政略結婚だったにも関わらず、スティーヴンはイルマに浮気し、妻のミシェルを捨てた。 スティーヴンは政略結婚の重要性を理解できていなかった。 そのような男の愛が許されるはずないのだが、彼は愛を貫いた。 捨てられたミシェルも貴族という立場に翻弄されつつも、一つの答えを見出した。

私をもう愛していないなら。

水垣するめ
恋愛
 その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。  空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。  私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。  街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。  見知った女性と一緒に。  私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。 「え?」  思わず私は声をあげた。  なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。  二人に接点は無いはずだ。  会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。  それが、何故?  ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。  結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。  私の胸の内に不安が湧いてくる。 (駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)  その瞬間。  二人は手を繋いで。  キスをした。 「──」  言葉にならない声が漏れた。  胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。  ──アイクは浮気していた。

50歳前の離婚

家紋武範
恋愛
 子なしの夫婦。夫は妻から離婚を切り出された。  子供が出来なかったのは妻に原因があった。彼女はそれを悔いていた。夫の遺伝子を残したいと常に思っていたのだ。  だから別れる。自分以外と結婚して欲しいと願って。

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

【完結】捨てられ正妃は思い出す。

なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」    そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。  人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。  正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。  人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。  再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。  デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。  確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。 ––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––  他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。  前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。  彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。  

処理中です...