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エピローグ【凛の話2】

龍次郎とのやり取り

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ブブッ

【部屋に行ったから、好きな時にきたらいいから】

龍ちゃんから、メッセージがやってきた。離れている間、どうやらメッセージでやり取りしようと龍ちゃんは思っているようだった。

「そういうとこだよ」

私は、OKというスタンプを返しながら笑っていた。皆月龍次郎は、私に関して不思議な事をする人だった。結婚して、三年目の夏、私達は大喧嘩をした。私は、当時を思い出しながら目を閉じる。





「もういい」

「何が、もういいんだよ」

「龍ちゃんには、わからない」

「わかるように言ってくれよ」

「知らない」

些細な出来事だった。生理痛が酷くて寝込んでる私の為に、龍ちゃんが掃除や洗濯をしてくれた。だけど、お気に入りのジーパンが何故か斑模様に色が抜けていた。私は、それがどうしても許せなかった。

「ごめんな。でも、何で怒ってるか教えてくれよ」

「自分で考えてよ」

「凛」

「うるさい、あっちに行って」

私は、龍ちゃんに怒って布団を被った。三日も経てば意外におしゃれかもなんて笑って履いているのだけれど…。この時は、許せなかった。そんな私に龍ちゃんは、思いがけない事をやるのだ。

暫く、布団をかぶっていたけれど暑くなってきて私は出た。少しだけ怒りのボルテージが下がり、言いすぎたかな?と思い始めた頃だった。

何故か龍ちゃんは、寝室にやってきた。

「凛」

そう言って、何故かトレーに飲み物を持ってやってくる。

「何」

冷たく言った私に何故かアイスコーヒーを見せる。

「何よ」

「見てみて、二層にうまくわかれたんだよ!ほら、飲んでみてよ」

何故、寝室でアイスコーヒーを飲まなければいけないのか?生理痛が酷いのに、何故かコーヒーを持ってきたのか?不思議な気持ちと同じぐらい。笑いが沸き上がってきたのを覚えている。

「二層になったから、何よ」

「凄いだろ?ほら、このコントラストとかさ」

「龍ちゃんって、馬鹿なの?怒ってるのわかってる?」

私は、龍ちゃんにそう言った。

「凛を失うぐらいなら、馬鹿なぐらいが丁度いい」

そう言って、アイスコーヒーを渡された。飲んだアイスコーヒーは、ビックリするぐらい甘くて笑ってしまった。

「甘過ぎ、ハハハ」

「やっと笑ったー」

そう言って、龍ちゃんもアイスコーヒーを飲んだ。

「あまっ!これは、砂糖だな」

「だねー」

二人して、大笑いしたのを覚えてる。

私は、ゆっくり目を開けた。涙を拭った。龍ちゃんに会わせてくれた片平さんが言ってた。

「龍君はね、ちょっと変わってるけど…。本当に優しい子なの。だから、よろしくね」

そう言われて、私は頷いた。ちょっと変わってるから、私といれるんだと思った。
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