上 下
336 / 646
エピローグ【拓夢の話1】

帰宅と凛の話

しおりを挟む
俺と凛は並んで歩く。凛がいるとやっぱりキラキラしてる。この暗闇も全部愛せるから不思議だ。
俺の家について、鍵を開ける。

「何か、久しぶりに来たみたいに感じるね」

凛は、玄関に入った瞬間に、そう言った。

「確かに、久しぶりではあるな!」

俺は、鍵を閉めながら、そう話した。

「拓夢、私」

「うん」

「夫と家庭内別居してたの」

俺は、その言葉に凛を見つめて固まっていた。

「もう、私達、駄目だよね」

「いつから?」

「2日前…」

「まだ、大丈夫だよ」

俺は、荷物を置いて凛の頭をポンポンと撫でる。

「龍ちゃん、優しすぎるから」

凛の旦那さんが、龍ちゃんという名前だって、俺は初めて知った。

「龍ちゃんと別れたくないんだよな?」

「あっ、ごめんね。いつもの癖で」

俺は、凛にわざと言った。だって、龍ちゃんと呼ばれた、その人は凛の事を幸せに出来る人だってわかるから…。

「謝る必要なんてないよ!玄関だから、中に入ろうか」

「うん」

俺は、袋を持ってキッチンに向かう。凛も、後ろをついてくる。

「凛、聞かせてくれる?」

「何を…」

「旦那さんと何で家庭内別居になったのか…」

俺の言葉に、凛は俺を見つめる。

「先に冷蔵庫いれるよ!飲み物は?お酒がいい?」

「何でもいい」

俺は、冷蔵庫にさっき買ってきた食品を入れる。冷蔵庫から、ビールとチーズを取り出しグラスを2つ持っていく。

「ビール飲みたいから付き合ってくれない?」

俺は、凛にそれを渡した。

「うん」

凛の隣に並んで座る。凛は、缶を開けてビールを注いでくれる。

「乾杯」

「乾杯」

凛は、渡したキューブ状のチーズを捲りながら口に運んで泣き出した。俺は、それを気にしないようにチーズを取って捲って口に放り込んだ。

「龍ちゃんってあの子が言ったの」

凛は、そう言って泣いてる。

「うん」

「理沙ちゃんが、連絡してくれて…。あの子が出て、龍ちゃんって言ったの」

「うん」

「龍ちゃんって呼んでるのは、私だけなの。何で、あの子が知ってるのって…。そればっかり頭の中を流れちゃって。それで、お酒飲んでたから…。フラフラした私を支えてくれようとした龍ちゃんに触らないでって言っちゃったの…。本当の事、何も確かめてなかったのに…」

凛は、そう言いながら手で涙を拭っている。俺は、ティッシュの箱を取って凛の前に置いた。

「拓夢、私、最低だよね。私は、拓夢に抱かれてた。凛君とだって…。だから、龍ちゃんも別の人とそうなればいいって思ってた。なのに、現実にそうなったんじゃないかって思ったら許せなかったの」

凛は、そう言いながら涙を必死で拭っている。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。

星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。 グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。 それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。 しかし。ある日。 シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。 聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。 ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。 ──……私は、ただの邪魔者だったの? 衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。 裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。 ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

裏切りの先にあるもの

マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。 結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。

処理中です...