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エピローグ【拓夢の話1】

凛との再会

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俺達は、つくまでの間、もう話さなかった。俺は、凛との久しぶりの再会に緊張していた。

「ついた」

駅について、まっつんは電車を降りる。パンケーキ屋がある駅だとすぐにわかった。階段を上がり、改札を抜けていく。俺は、黙ってまっつんについていく。

まっつんが、連れて行こうとしてる場所が凛が平田さんとキスをしていた公園だと気づいた。

「拓夢、大丈夫か?」

「俺は、大丈夫だよ」

まっつんは、頷いて公園に入って行く。

「どうして、そんな嘘がつけるの」

理沙ちゃんの怒ってる声が聞こえ始める。

「はぁ?嘘じゃないから」

「凛ちゃんの旦那さんは、そんな事言わない」

「本当だから、本当に言ったから!可愛そうだよねー。子供産めない人間って」

「それ以上、凛ちゃんを傷つけるのは理沙が許さない」

「離せよ」

理沙ちゃんは、女に掴みかかってる。

「理沙、やめろ」

まっつんは、走って行って、それを止める。

「離して、こいつが凛ちゃんを傷つけたの!だから、理沙は許せないの」

凛は、地面に座り込んで泣いてる。近づくと女は、制服を着ていた。

「はぁ、はぁ、はぁ!お前、何してるんだよ」

俺は、その声に振り返った。現れたのは、平田さんだった。

「凛、凛が悪いんでしょ?こんなおばさんと初めてしちゃって!こんなのまで、送りつけてきて」

そう言って、現れた平田さんに何かを見せている。

「ふざけんなよ!こんな事したって、僕は、お前を好きにならないから」

「どうしてよ、どうして、そんな酷い事言うの?」

「やっていい事と悪い事があるだろ?凛さんの旦那さんの所にも行くなんて最低だ」

俺は、その言葉に平田さんを見る。

「そんなのこいつが悪いからに決まってるじゃない。こいつはね…」

「はすみ、僕ははすみを許さないよ」

平田さんは、俺に頭を下げていなくなる。

「待って、凛。待ってよ」

はすみと呼ばれた女の子は、平田さんを追いかけて走っていなくなってしまった。

「凛……」

俺は、凛の傍に行く。

「たく…む」

凛は、俺に抱きついてきた。

「もう、大丈夫」

「家に帰りたくない、帰りたくないよー、あー、あー」

何を言われたのか、凛は子供のように俺にしがみついて泣き出した。

「わかった。俺の家においで!落ち着くまで、いればいいよ」

俺は、凛を抱き締めながら背中を擦る。

「本当に?いいの?」

「いいよ」

凛は、俺を強く抱き締めてくる。何があったかとか、何を言われたのかとか、聞くつもりはなかった。俺の事を抱き締めてくる凛を見てると、凄く傷つけられたのがわかるから…。
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