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エピローグ【凛の話1】

理沙ちゃんとご飯

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『いただきます』

「はい、フォークとスプーン」

「ありがとう」

「写真撮らないの?」

「あっ、忘れてたー」

理沙ちゃんは、スマホを取り出してパシャパシャと撮った。

「あったかいうちに食べよう」

「うん」

私と理沙ちゃんは、熱々のカルボナーラを食べる。真ん中の黄身がオレンジ色で、潰すとパスタはオレンジに輝いていた。夕日みたいで綺麗だった。龍ちゃんと旅行に行った時に見たあの夕日みたい。

「泣く程、美味しかった?」

「ごめんね」

理沙ちゃんに、ハンカチを差し出される。

「食べた事ないぐらい感動してる」

「よかったー。チーズが最高なんだよ」

理沙ちゃんは、軽くウィンクをしてわかってるって合図をしてくれた。

『ごちそうさまでした』

私達は、パスタを食べ終わった。

「払うね」

「いいよ、私が出すから」

そう言って、理沙ちゃんはお金を払ってくれる。

「ありがとう」

「いいの、いいの」

理沙ちゃんは、そう言うと私を連れてく。

「どこに行くの?」

「人がいない場所」

そう言って、やってきたのはカラオケだった。

「電話かけるのには、いいでしょ?」

「うん」

案内された店内は、向こうと違ってプロ仕様だ。

「歌手の人が、レコーディングしてるのと同じだよね」

「そうだよね」

理沙ちゃんは、そう言いながらマイクを触っていた。

「凛ちゃん、番号」

「あっ、うん」

私は、理沙ちゃんにスマホから写真を見せる。

「えっと、080」

そう言いながら、理沙ちゃんは電話をかける。

「名前は?」

「適当、適当」

そう言って、理沙ちゃんは笑ってる。理沙ちゃんは、スピーカーにしてくれていた。

プルル、プルルー

『はい』

「あのー、すみません」

『誰?』

「遠藤ですが…」

『はあ?誰?』

「メモをもらって、もっと知りたいなら連絡を…って」

『あー、龍ちゃんの奥さん?』

私は、その言葉に固まって泣いていた。理沙ちゃんは、ポロポロ泣く私の手を握りしめてくれる。

「あの、何を知ってるんですか?」

『色々知ってるよー。いろいろ』

声を出して泣きそうになるから口を押さえる。

「どういう意味ですか?」

『あー、会って教えてあげる!龍ちゃんの事も、うちが知ってる奥さんの秘密も…』

「わかりました。いつ、どこに行けばいいですか?」

『そうだねー。二日後。パンケーキのお店の近くの公園で会わない?』

「何時に行けばいいですか?」

『時間は、12時ね!じゃあ、そういう事で。ハハハ』

たからかな笑い声が響いて、電話が切れる。

プー、プー。

「若い人だったね」

「うん」

私は、理沙ちゃんの手を握りしめる。

「大丈夫?」

「龍ちゃんって呼んでるの、私だけなの」

「どこかで話した事はない?」

「ないと思う」

理沙ちゃんは、不思議そうな顔をする。
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