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拓夢の最後の話2

苦しませてる

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「もし、出来たら旦那さんと別れて、俺と一緒になってさ」

俺は、馬鹿だ。凛が欲しいからってヒドイ事言ってる。

「したいなら、していいよ!でも、拓夢が思ってる事は起きないよ」

凛の目から、止めどなく涙が流れてくる。

「わかんないだろ?」

「わかるよ!!」

さっきと違って、凛は、怒った声で言う。

「私がどれだけ、この身体に裏切られてきたと思う?いくら出したって妊娠なんかしないよ。そんなの私が一番わかってるよ」

「ごめん、凛」

凛は、あの日の目をしていた。出会ったあの日と同じ目を…。俺は、タオルケットを取って自分の上にかけてから、凛を起こして抱き締める。

「していいよ」

「するなら、ちゃんと避妊するから」

そして、俺の上に凛を座らせた。

「ごめんね、先に酷い事言って」

「わかってるよ。俺が、凛を欲しくなったから言ったんだろ?」

凛は、答えずに俯いた。

「撮らせて、声だけでいいから」

「いいよ」

「もう、わがまま言わないから」

「わがままじゃないよ!私、結婚してなくて赤ちゃんが出来る身体なら…。拓夢を選んでたよ」

その言葉は、凛の答えだった。俺は、どう転んだって選ばれないのがわかった。出会って僅かな時間で、凛はあの日より強くなったのを感じた。そして、旦那さんへの愛をより認識したのがわかった。

「スマホとってくる」

「私のも…。洗面所の鞄に入ってる」

「わかった」

俺は、凛を降ろしてスマホを取りに行く。最初から、選ばれないのなんてわかっていた。なのに、何でこんなに苦しいのかな…。

俺は、洗面所の凛のバックからスマホを取り出した。俺のスマホも洗面台から取った。キッチンで、500のペットボトルの水を取って持って行く。

「はい」

「ありがとう」

「水、一本しかなかったから先に飲んで」

「飲ませて」

凛は、そう言ってきた。俺は、ボトルを開けて凛の口に持っていこうとする。

「そうじゃない」

その手を凛は止めると、俺から水を取って、口に含んだ。そして、俺にキスをしてくる。

「ゴクッ」

「そうしてって事」

凛は、そう言って笑った。

「撮って」

俺は、凛にカメラを起動するように言った。

「拓夢も撮って」

凛も俺にそう言った。

ピコン…。

二人同時に録画ボタンを押した。

「凛、愛してるよ」

「私も、愛してる」

「カメラ向けてるけど?」

「これぐらいの角度でしょ?」

「何の角度?」

「拓夢が映ってる、彼女目線ってやつ?あー、違う」

「エッチなDVDの話してんの?」

「何か、その言い方の方がいやらしく感じるの不思議だね」

俺達は、お互いの顔にカメラを向けて話してる。
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