上 下
284 / 646
凛の最後の話2

映画

しおりを挟む
「じゃあ、出発するよ」

「はい」

エンジンをかけて出発する。

「龍ちゃん」

「何?」

「子供がいない人生でよかった事はある?」

「うーん!あるよ」

「何?」

「休日に早起きしないでいい」

「確かに、他には?」

「そうだな!早寝しなくていい」

「確かに、そうだね」

でも、そんなんしかないんだよね。

赤信号で車が停まった。龍ちゃんは、前をみて淡々と話す。

「教育上よくないって言われるようなTVを見れる!行儀悪いって怒られるような事出来るだろう!それから、いつでも、凛を抱ける」

「変態」

「悪かったな!」

「フフフ、最後のが一番でしょ?」

「当たり前だ!いつでも、凛に触れていたいよ!どの瞬間でも、俺は…。あっ、ちゃんと外ではしませんから」

「当たり前だよ」

私の言葉に龍ちゃんは、私を一瞬見てから、前を向いた。

「やっと、笑ったな」

車を発進する。

「そう?」

「何か、また見たんだろ?朝、起きたら凛が抱きついてるから…。そんな気がした」

「ごめんね」

「謝る必要なんてないよ!年齢的にも、まだ子供が欲しいのは当たり前だと思うんだ。タイムリミット何かなかったら、皆幸せなのにな!1000年ぐらい生きれたら、きっと全員子供産めてるよな」

龍ちゃんは、そう言って笑ってる。複合施設の駐車場についた。あの日、虹色の傘を買ってくれた所。

「もうすぐしたら、諦められるから…。だから、もう少しだけ待ってて」

「いつでもいいから」

龍ちゃんは、車を停める。私は、車から降りた。龍ちゃんも降りてきて、さっと手を繋いでくれる。二人で生きて行く未来に、まだ慣れないの。

ごめんね。龍ちゃん…。

映画館で、龍ちゃんはチケットを買ってくれる。

「ポップコーン食べる?」

「いいよ」

「飲み物は?オレンジ?」

「うん」

龍ちゃんは、ペアセットって言うのを頼んでる。

「すぐ始まるって!凛、トイレは?」

「行く」

「先、行ってきて」

「わかった」

私は、先にトイレに行ってから戻って龍ちゃんと交代した。

「じゃあ、行こうか」

「うん」

私と龍ちゃんは、しんの映画を見る。終わる頃には、泣いていた。智天使(ケルビム)の曲が、かかり始める。

(震える程に…掴みたい光(もの)があった…でも、それは…僕には…掴めやしないから)

真っ暗闇の中で、周りの人のすすり泣く声が聞こえる。明るくなって、私と龍ちゃんは立ち上がった。

「めっちゃ、よかったな」

「うん、泣いた」

「俺も泣いたわ」

「しんの作品って、私達夫婦にはガツンと刺さるね」

「うん、わかる」

ゴミ箱にポップコーンや飲み物のゴミを龍ちゃんは捨てている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

[完結]貴方なんか、要りません

シマ
恋愛
私、ロゼッタ・チャールストン15歳には婚約者がいる。 バカで女にだらしなくて、ギャンブル好きのクズだ。公爵家当主に土下座する勢いで頼まれた婚約だったから断われなかった。 だから、条件を付けて学園を卒業するまでに、全てクリアする事を約束した筈なのに…… 一つもクリア出来ない貴方なんか要りません。絶対に婚約破棄します。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

もう惚れたりしないから

夢川渡
恋愛
恋をしたリーナは仲の良かった幼馴染に嫌がらせをしたり、想い人へ罪を犯してしまう。 恋は盲目 気づいたときにはもう遅かった____ 監獄の中で眠りにつき、この世を去ったリーナが次に目覚めた場所は リーナが恋に落ちたその場面だった。 「もう貴方に惚れたりしない」から 本編完結済 番外編更新中

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

いい子ちゃんなんて嫌いだわ

F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが 聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。 おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。 どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。 それが優しさだと思ったの?

いも×あね!〜禁断のあい〜

金魚屋萌萌@素人作家お嬢様
恋愛
 私は愛しさのあまり、妹の唇に触れてしまう。  その過ちから、そっと百合の蕾はひらいていく………。  私……みこの姉。15歳。太ってはいないが、少し胸が大きくなってきたのが最近の悩み。姉として妹が好き。  みこ……私の妹。11歳。細め。悩みごとはない。姉に甘えがち。

キケンな放課後☆生徒会室のお姫様!?

美和優希
恋愛
入学早々、葉山優芽は校内で迷子になったところを個性豊かなイケメン揃いの生徒会メンバーに助けてもらう。 一度きりのハプニングと思いきや、ひょんなことから紅一点として生徒会メンバーの一員になることになって──!? ☆゜+.☆゜+.☆゜+.☆゜+.☆ 初回公開*2013.12.27~2014.03.08(他サイト) アルファポリスでの公開日*2019.11.23 *表紙イラストは、イラストAC(小平帆乃佳様)のイラスト素材に背景+文字入れをして使わせていただいてます。

妖精のお気に入り

豆狸
ファンタジー
羽音が聞こえる。無数の羽音が。 楽しげな囀(さえず)りも。 ※略奪女がバッドエンドを迎えます。自業自得ですが理不尽な要素もあります。

処理中です...