上 下
282 / 646
凛の最後の話2

龍ちゃんが作る朝御飯

しおりを挟む
寝室に入って、パジャマを取り出す。部屋着から着替える。洗濯かごにいれる。朝起きたら、これを持ってくようにしてる。私は、龍ちゃんに抱きついて眠る。

「龍ちゃん、私達の人生可哀想じゃないよね」小さな声でポツリと呟いた。龍ちゃんは、眠ってるのに私をギューっと抱き締めてくる。

「うーん。お腹いっぱいで、もう食べれないよ」そう寝言を話す。何その夢?

「龍ちゃん、助けて」私は、小さく呟いた。龍ちゃんは、さらに私を抱き締める。「愛してるよ、凛」囁くように寝言を言った。涙が流れてくる。龍ちゃんと生きていく。二人で生きてく事だけを考えられるようにするから…。

「私もだよ!龍ちゃん」





ピピピ、ピピピ

「はあー、うーーん」

私は、目覚ましのアラームで起きた。龍ちゃんは、いなかった。
ゆっくり起き上がって、寝室を出る。

「あっつ!うわー、ヤバい、ヤバい」

龍ちゃんの声がキッチンから聞こえてきて覗く。

「おはよう」

「おはよう」

龍ちゃんは、私を見つけて苦笑いを浮かべてる。

「何してるの?」

「朝御飯!食べる?」

「何か、焦げ臭いよ」

「えっ!うわっ、あっつ!」

龍ちゃんは、フライパンの蓋を取りながらあたふたしていた。

「そんなに料理出来なかったっけ?」

昨日餃子を焼いてくれていたのに、今日は慌ただしい。

「久々のガス火だからな!ラーメンしか作れないし」

龍ちゃんは、そう言って笑った。

「歯磨いてくる」

「じゃあ、持ってくわ」

「うん」

私は、洗面所に行って歯を磨いて顔を洗った。さっきの龍ちゃんを思い出して笑えてくる。リビングにもどると、朝御飯が用意されていた。

「凛、昼からだと子連れとか増えるだろうから朝行こうか」

「うん」

「見たくないだろ?子連れ」

「そんな事は…」

「あるんだろ?何かあったって顔してるし」

私は、ダイニングの椅子を引いて座る。龍ちゃんは、納豆を置いてから座った。

「あのさ、独り身とか子なしって可哀想なのかな?」

龍ちゃんは、私を見つめて「強い人だと思う」そう言ってから「いただきます」と言ってご飯を食べ始めた。

「強い人?」

私は、首を傾げた。龍ちゃんは、味噌汁茶碗を置いてこう言った。

「だって、人は一人じゃ生きれないだろ?だけど、独身でいるって強くなきゃ無理だろ?俺は、凛と一緒に生きてるから、今さら一人なんて考えられない。嫌な事や悲しい事があった時、家に誰もいないのは無理かな…。でも、独身の人は逆だろ?家に人がいたら無理だって言うだろ?俺は、強いと思う。むしろ、皆、羨ましいんだと思うよ!そんな風になれないから…。俺は、羨ましいけどね」

龍ちゃんは、そう言ってまた味噌汁を飲み出した。強い人、羨ましい、龍ちゃんの言葉は、私の想像していない答えだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】試される愛の果て

野村にれ
恋愛
一つの爵位の差も大きいとされるデュラート王国。 スノー・レリリス伯爵令嬢は、恵まれた家庭環境とは言えず、 8歳の頃から家族と離れて、祖父母と暮らしていた。 8年後、学園に入学しなくてはならず、生家に戻ることになった。 その後、思いがけない相手から婚約を申し込まれることになるが、 それは喜ぶべき縁談ではなかった。 断ることなったはずが、相手と関わることによって、 知りたくもない思惑が明らかになっていく。

【完結】裏切っておいて今になって謝罪ですか? もう手遅れですよ?

かとるり
恋愛
婚約者であるハワード王子が他の女性と抱き合っている現場を目撃してしまった公爵令嬢アレクシア。 まるで悪いことをしたとは思わないハワード王子に対し、もう信じることは絶対にないと思うアレクシアだった。

学園にいる間に一人も彼氏ができなかったことを散々バカにされましたが、今ではこの国の王子と溺愛結婚しました。

朱之ユク
恋愛
ネイビー王立学園に入学して三年間の青春を勉強に捧げたスカーレットは学園にいる間に一人も彼氏ができなかった。  そして、そのことを異様にバカにしている相手と同窓会で再開してしまったスカーレットはまたもやさんざん彼氏ができなかったことをいじられてしまう。  だけど、他の生徒は知らないのだ。  スカーレットが次期国王のネイビー皇太子からの寵愛を受けており、とんでもなく溺愛されているという事実に。  真実に気づいて今更謝ってきてももう遅い。スカーレットは美しい王子様と一緒に幸せな人生を送ります。

【完結】おしどり夫婦と呼ばれる二人

通木遼平
恋愛
 アルディモア王国国王の孫娘、隣国の王女でもあるアルティナはアルディモアの騎士で公爵子息であるギディオンと結婚した。政略結婚の多いアルディモアで、二人は仲睦まじく、おしどり夫婦と呼ばれている。  が、二人の心の内はそうでもなく……。 ※他サイトでも掲載しています

妖精のお気に入り

豆狸
ファンタジー
羽音が聞こえる。無数の羽音が。 楽しげな囀(さえず)りも。 ※略奪女がバッドエンドを迎えます。自業自得ですが理不尽な要素もあります。

【完結】冷遇・婚約破棄の上、物扱いで軍人に下賜されたと思ったら、幼馴染に溺愛される生活になりました。

えんとっぷ
恋愛
【恋愛151位!(5/20確認時点)】 アルフレッド王子と婚約してからの間ずっと、冷遇に耐えてきたというのに。 愛人が複数いることも、罵倒されることも、アルフレッド王子がすべき政務をやらされていることも。 何年間も耐えてきたのに__ 「お前のような器量の悪い女が王家に嫁ぐなんて国家の恥も良いところだ。婚約破棄し、この娘と結婚することとする」 アルフレッド王子は新しい愛人の女の腰を寄せ、婚約破棄を告げる。 愛人はアルフレッド王子にしなだれかかって、得意げな顔をしている。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

処理中です...