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凛の最後の話

晩御飯の準備

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全力でぶつかれ、全部をさらけ出せ、そんな言葉を信じてはいけない。全力で相手とぶつかり合い、罵倒し合うと心身共に疲弊する。それを全部頑張って受け止めようとすると自分が壊れてしまうのがわかった。それを知ってるから、龍ちゃんは元に戻った。これ以上は、言わない、聞かない、知らないフリをする。でも、時々もっと踏み込んで欲しい時がある。それを理解されずスルーされたら悲しくなる。でも、悲しいとは素直に言えない。大人って生き物は、めんどくさくて複雑だと思った。

「いい感じだなー」

龍ちゃんは、ホットプレートを開けて水を注いでいる。

「龍ちゃん」

私は、立って作業してる龍ちゃんを後ろから抱き締める。

「二人なんだから、子供みたいになればいいんだよ」

龍ちゃんは、そう言って私の手を握りしめる。

「でも、出来ないよなー。会社でも出ちゃいそうだから」

「そうだよね」

「大人ってめんどくさいな!凛と5歳とかで出会ってたらよかったのにな」

龍ちゃんは、そう言ってホットプレートの蓋を開ける。

「あっつ」

「大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫」

「湯気でやけどした?」

「たいした事ないって」

私は、龍ちゃんから離れて手を取る。

「赤くなってる、冷やさなきゃ」

「大丈夫だよ」

龍ちゃんは、そう言って手を引っ込める。

「ほら、レンジ鳴ってたよ」

「うん」

私は、キッチンに行く。

「あつっ」

「大丈夫か?」

ホットプレートを保温にして龍ちゃんが現れた。手を掴まれる。

「赤くなってる?冷やす」

罪悪感何か感じないと思ってた。

「大丈夫」

「俺が、とるよ」

龍ちゃんは、チンしたご飯を取り出してる。あの動画を見たら、軽蔑する?あの声を聞いたら、嫌いになる?龍ちゃん、教えてよ!龍ちゃんは、お茶碗にお米を入れてる。

「何が起きても嫌いにならない?」

「何、急に…」

「別に、何でもないよ」

「俺は、凛を嫌いになる瞬間があるのかな?どうだろうか?例え、誰かに抱かれて感じてても嫌いになれない気がする。何だろう…。勝手だけど、俺は凛が戻ってくるって自信があるんだ!だから、誰と何をしてても嫌いになれないんだよな」

龍ちゃんは、熱がりながらもお茶碗にご飯を入れ終わる。私は、龍ちゃんの手を掴んでいた。

「どうした?」

「わからない」

「お腹すいたから、食べよう!」

「お酢と醤油とラー油持っていくね」

「うん。ご飯もってく」

「後、ビールもね」

「わかった!向こうに座ってるから」

龍ちゃんは、ダイニングテーブルに行った。私は、冷蔵庫から調味料を取り出す。ビールも出した。龍ちゃんがいない人生を考える事が出来ないってのがわかった。だって、今、龍ちゃんに嫌いにならない?って聞いた時にわかった。私は、皆月龍次郎が絶対いなくならない自信がもてない。始めの時は、信じられたのに…。今は…。

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