上 下
256 / 646
凛の最後の話

父親との話

しおりを挟む
龍ちゃんは、私の両頬をムニュと軽くつねった。

「俺ね、昔、父さんに言われたんだ」

「何を?」

「結婚しても秘密はあるんだよって!その秘密や嘘を見ないフリしていれる相手なのか?って」

「秘密なんてあったら、駄目だよね」

どの口が言ってるのだろうか?私は、自分の言葉に呆れる。

「あっていいんだよ!全部を話してるわけじゃないだろ?だけど、夫婦生活がうまくいってるならいいんだよ!例え、秘密を抱えていても…。俺は、凛が話せるようになるなら聞くよ!でも、話せないなら聞くつもりはない。それに、俺だって凛に言ってない秘密はあるんだ」

龍ちゃんに、そう言われた瞬間に胸が痛む。龍ちゃんは、秘密などない人間だと勝手に思っていた。

「話してくれないの?」

私は、両頬にある龍ちゃんの手を包み込むように握りしめる。

「俺の秘密は、許せない?」

その言葉に私は、ハッとして手を離した。自分は、蓮見や拓夢や凛君の秘密を抱えておきながら龍ちゃんに秘密がある事が許せないなんて…。
そんな考え方をしてる自分は、最低だと思った。

「ごめんなさい」

龍ちゃんは、私の頬から手を離して頭をよしよしと撫でてくる。涙が頬をツーと流れる。

「龍ちゃん、私。ごめんなさい」

龍ちゃんは、ニコニコしながら私の顔を覗き込む。

「謝る必要なんて、何もないんだよ。そんなに泣かなくたっていい。ただ、俺だって凛には言えない秘密があるよって知って欲しかっただけだよ。もしかしたら、死ぬまでに話せるかも知れない。嫌、墓場までもっていくかも知れない。それでも、見ないフリをしてくれないか?」

私は、龍ちゃんの言葉に頷いた。

「夫婦は、他人なんだ!何でも話せばいいってもんじゃない。何でも見せればいいってもんじゃない。そこを折り合いつけながらやってくのが一番いいんだぞって!父さんに言われた。だから、俺も凛の全てを知りたいけれど知れないのは当然だと思ってる。だって、凛は俺じゃないから…」

龍ちゃんは、そう言って私の頬を優しく撫でてくれる。

「だから、凛がいつか打ち明けたくなるなら話して!その時は、俺も打ち明けるから…。それまでは、お互いに目を瞑って見ないフリをしていよう」

私は、龍ちゃんの言葉に頷く…。皆月龍次郎が、抱えてる秘密とは何なのだろうか?それを知る術は、今は存在しないのがわかる。秘密がある!そう言われただけで、急に龍ちゃんが全く知らない人にさえ思えた。私は、皆月龍次郎の何を知っているのだろうか?

「餃子食べよう」

「うん」

龍ちゃんは、そう言ってお腹を押さえながら洗面所を出て行った。私は、洗濯機のスイッチを押してキッチンに向かう。
    
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

先生、生徒に手を出した上にそんな淫らな姿を晒すなんて失格ですよ

ヘロディア
恋愛
早朝の教室に、艶やかな喘ぎ声がかすかに響く。 それは男子学生である主人公、光と若手美人女性教師のあってはならない関係が起こすものだった。 しかしある日、主人公の数少ない友達である一野はその真実に気づくことになる…

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

王妃の私には妾妃の貴女の考えなどお見通し

麻宮デコ@ざまぁSS短編
恋愛
王太子妃となったミリアリアは不妊症であると医者に告げられ嘆き悲しむ。 そんなミリアリアに従妹のクローディアは自分が代わりに王の子供を産むと宣言した。 世継ぎを産み育てる役割だけはクローディアに。 それ以外の役割はミリアリアに。 そして宣言通り、クローディアは王子を出産した。 月日が経ち、ミリアリアは王太子妃から王妃になったが、そんな中で夫である王が急死してしまった。 ミリアリアはまだ年若い王子に王位を継がせずに自分が即位することにし、今まで表に出せなかった真実を露わにしていく。 全4話。

夫を愛することはやめました。

杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。

50歳前の離婚

家紋武範
恋愛
 子なしの夫婦。夫は妻から離婚を切り出された。  子供が出来なかったのは妻に原因があった。彼女はそれを悔いていた。夫の遺伝子を残したいと常に思っていたのだ。  だから別れる。自分以外と結婚して欲しいと願って。

選ばれたのは美人の親友

杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

処理中です...