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凛の最後の話

龍ちゃんの優しさが好き

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私は、龍ちゃんの背中に手を回す。

「言いたい事はわかるよ」

まだまだ、龍ちゃんは話したい言葉があるのがわかる。そして、確実に何かを知っている。それが、いつからなのかは私には解らない。

「シンプルに言ったら、俺は凛といたいってだけだ」

そう言って、龍ちゃんは強く抱き締めてくる。

「単純だよな、俺。何されたって、凛を愛してるんだ!例え、明日凛に殺されても愛してるよ」

「極端だよ」

「そうだな!でも、それぐらい俺は凛に惚れてるって事だから」

私は、龍ちゃんを離したくないと思った。セックスがなければ、私達夫婦は幸せで仲が良い。だけど、子供を考えるとすれ違っていがみ合って互いを傷つける。

「龍ちゃん、ご…。ご飯食べた?」

ごめんねと言いそうになってやめた。今、謝るのはおかしい。不倫を認める事になる。でも、謝って楽になりたい。それで、スッキリしたい。

「そんなに食べてない!弁当小さいのにしちゃったからさー」

私は、龍ちゃんの優しさが大好きだった。本当は、お腹いっぱいなのに嘘をついてまだ食べれると言う所や苦しくて悲しくて泣いてるのに、大丈夫って言っちゃう所や、私の事を考えて欲しいものを諦めちゃう所や、欲しくないものを喜んでくれる所…。私は、龍ちゃんの優しい所が大好きだった。そして、私は知っている皆月龍次郎よりも私を愛してくれる人間(ひと)などいない事を…

「だから、お腹すいてる。餃子焼いて」

「うん」

皆月龍次郎のように、私を許してくれる人間(ひと)などいない。離れようとした瞬間、チュッと唇にキスをされる。

「凛は、お腹すいてないの?」

「何も食べてないよ」

朝から、何も食べていなかった。凛君の事でバタバタしていたし、拓夢の家について抱かれていたわけだし。

「じゃあ、餃子!ホットプレートで焼いて温かいの食べよう」

「うん」

私は、龍ちゃんに笑った。ドラマや映画のように、龍ちゃんが知ってる事や考えてる事が可視化されたら私はもっと皆月龍次郎を知る事が出来るのにと思った。これだけ長く、龍ちゃんと一緒にいるのに私は龍ちゃんの考えの全てを知らない。龍ちゃんが気づいてる何かを知らない。

「眉間に皺寄せてどうした?」

覗き込まれた瞳に涙が込み上げてくるのを感じる。

「さっきも言ったろ?俺は、何も知らないって!それに、知っていたとしても凛に話すつもりはない。何故かわかる?」

私は、首を左右に振る。

「俺に言えないって事は凛が苦しくて悲しい痛みがあるって事なんだろ?」

そう言って、龍ちゃんは頬の涙を拭ってくれる。

    
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