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拓夢の話12

出れば?

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「拓夢、電話出れば?」

「うん」

俺は、そう言われて電話に出る。

「もしもし」

『拓夢!今日、何してる?』

「今は、まっつんといるけど」

電話の相手は、かねやんだった。

『あのさ、松永先輩って人が今日ならこっちに来てるらしいんだ!拓夢が、大丈夫なら会わないか?』

「わかった!行くよ」

『いや、俺が今迎えに行ってるから!まっつんと何処にいるの?』

「いつもの場所だけど」

『なら、そこに連れてくわ!じゃあな!』

プー、プー。

そう言って、電話が切れた。

「誰?」

「かねやん」

「何か用事だった?」

「松永先輩って話しただろ?美紗の…」

「うん」

「あの人と来るって」

「話聞くのか?」

「うん」

「じゃあ、かねやん来たら俺は帰るわ!」

「別に居ていいよ」

俺は、そう言って珈琲を飲んだ。

「美紗ちゃんの事、知るの怖くないか?」

「怖い気持ちはある。でも、知らなきゃいけないだろ?離れてる間の美紗の事」

まっつんは、「そうだな」って呟いて珈琲を飲んだ。俺とまっつんは、それ以上話さなかった。お互いにスマホを見ていた…。

コンコンー

沈黙を破るようにノックの音が響いた。

「はい」

ガチャっと扉が開いて、かねやんとまだらに白髪のある男性が現れた。

「遅くなって、ごめんな」

そう言って、二人は入ってきた。

「全然」

かねやん達が入ってきてすぐに店員さんがやってきた。珈琲を4つ置いていなくなった。

「二人のも頼んだんだ」

かねやんは、そう言って男性に「こっちに座って下さい」と言っている。

「ありがとう」

俺とまっつんは、珈琲を取った。

「こっちが松永さんで、こっちが松田と星村です」

『初めまして』

俺とまっつんは、お辞儀をする。

「初めまして」

松永さんも、お辞儀をした。

「あの…」

「智から、頼まれてるから…。話していいのかな?」

かねやんの声に松永さんは、そう言って笑った。智の職場の人に何て初めて会った。

「お願いします」

俺は、頭を下げる。松永さんは、美紗との始まりから丁寧に話してくれた。そして、最後にこう言った。

「美紗はね、そいつの人生をとことん不幸にしなくちゃ気が済まない女だった」

「そいつって?」

松永さんは、珈琲を一口飲んで心を落ち着かせてる。

「俺の婚約者、自殺したんだ」

「えっ」

俺達は、全員固まった。

「心配しなくても、生きてるよ!だけど、彼女の両親には二度と会わせないって言われた。それに、三日間目が覚めなかったから…」

松永さんの目から、ポトリと涙の雫が流れるのを見つめていた。

「美紗が、追い詰めたんですよね?」

松永さんは、俺の言葉に頷いた。
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