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凛の話12

最後までしないから…

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私は、凛君から離れようとする。

「離してくれなきゃ!お酒飲めない」

「嫌だよ」

凛君は、そう言って私の腰に手を回してくる。

「でも、お酒」

「このまま、取って」

そう言われて、手を伸ばしてテーブルの上のレモンチューハイの缶を何とか取った。動いたから、よけい凛君のそれが当たる。

「あんまり動いたら、僕果てちゃうから」

耳元に顔を近づけて、凛君がそっと囁いてくる。二年後、凛君は私じゃない人とするだろう。でも、老婆心から、私は凛君に言ってしまう。

「初めてをする時は、凛君が本当にこの人って思う人として」

「それは、凛さんだよ」

「それは、今の話でしょ?もし、私とそうなれなかったとしても投げやりに誰かと肌を重ねないで」

「どういう意味?」

「私はね、凛君には幸せになって欲しいの」

私や拓夢のように、初体験を忘れたくなるような出来事にして欲しくなかった…。まだ、経験がないのなら大切にして欲しかった。

「流されたり、妥協して、いたずらに肌を重ねないで」

「凛さん」

「お願い、約束して」

凛君は、私を見つめる。私の頬を涙が濡らしていく。

「わかった。大切にする」

「うん」

凛君は、私の涙を拭ってくれる。私は、それを見つめながらお酒を飲んだ。

「凛君、初めてが遅いのは恥ずかしい事じゃないよ」

「凛さん」

「経験が少ない事も、恥ずかしい事じゃない」

「でも、馬鹿にされる」

「そんな人は、放っておけばいいの」

私の頬にある凛君の右手を左手で握りしめる。

「大切なのは、愛する人と愛し合えたかどうかだけ…」

「本当に?」

「本当だよ」

私は、チューハイをいっきに飲み干した。

「凛君」

「はい」

「初めてをやり直す事は、二度と出来ないの。凛君は流されないで…」

「凛さんは、初めてを後悔してるの?」

凛君の素直な目にしていないとは言えなかった。

「してる」

そう言った私は、抱き抱えて凛君は立ち上がった。

「怖いよ」

「しっかり掴まって」

私は、凛君にしっかり掴まった。まるで、赤ちゃんみたいだ。抱っこされてる。

ドサッ……

私は、ベッドにおろされる。

「電気消してあげる」

そう言って、凛君はパチパチと電気を消した。

「消し方わかんなかった」

玄関付近の電気だけが、消えずについていた。暗闇だけど、真っ暗じゃない。

「顔は見たい」

そう言って、ベッド近くの電気はつけられる。

「最後までは、しないから」

ほら、またあの呪文を凛君は口に出した。

「わかった」

「凛さん、触っていい?」

「いいよ」

私と凛君は、向き合って寝転がっていた。凛君は、お腹からゆっくりと手を入れていく。上野を思い出し、拓夢の初めてを聞かされなければ、凛君とこんな風にはならなかった。だけど、思い出してしまった今…。私は、凛君を受け入れようと決めていた。
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