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拓夢の話11

ルールがある

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平田さん母親は、ティッシュで、また涙を拭った。

「あいつの不倫相手は、わざわざ私に会いに来てこう言った。あなたに、体の関係も拒まれて可哀想だと思いませんか?だから、彼は私を求めたんですって」

平田さんの母親は、ビールをグビグビ飲んで鼻で笑う。

「フッ!馬鹿馬鹿しくて笑いがでた!誰が、関係を拒んでるって言ったのかわからなかった。私は、誇らしげに言う彼女に言ったのよ!あいつと私は、週四回はしてますよって」

平田さんの母親は、思い出したように、ニコニコ笑ってる。

「彼女の顔が青ざめた。で、そっからはあいつがどんなやり方が好きかとかを散々聞かされた。頭がおかしいと思ったよ!だから、私も負けじと言ってやった」

平田さんの母親は、ボロボロ泣き出してしまった。

「そしたら、あいつが帰ってきて彼女は悪くないって庇いだした。あいつは、二人で話し合いする為に彼女を家まで送ってから帰ってきた」

平田さんの母親は、目に手を当てて泣いている。

「私は、あいつに言ったの!家庭を壊す必要が何処にあったの?って!そしたら、すまないを繰り返した。だったら、私を抱いてんじゃねーよって怒った。そしたら、あいつ悪びれずにこう言った。君と別れるつもりはなかったからって…。だったら、最後まで嘘を突き通して欲しかったって言った」

その言葉に、俺は凛の旦那さんもそれを望むんじゃないかと思っていた。平田さんは、ビールをいっきに飲み干してからいっきに話す。

「彼女が、君に勝手に会いに来て出来なかったって頭を下げられた。不倫するのってね!ルールがあるのよ、星村さん」

平田さんの母親は、涙目で俺を見つめる。

「ルールですか?」

「そう!」

「それは、何ですか?」

「相手の家族に絶対に会いに行かない事」

「それは、そうですよね」

俺は、苦笑いを浮かべてビールを飲んだ。

「当たり前の事だけど、出来ない人は多いのよ!段々と欲しくなっていくのよ!その人の全てが…。そうなったら、もう終わり。遊びじゃなくなってる」

「壊されて、凛さんを愛せなくなったんですか?」

平田さんは、俺の言葉にゆっくり頷いてこう言った。

「凛をいらないと思っちゃったのよ!あいつがあっちを取った時にね…。父親に似てる凛への嫌悪が溢れてくるのを感じたから…」

そう言うと平田さんの母親は、立ち上がってビールを取りに行った。

「私は、凛には無理だとわかってるの」

「何をですか?」

「凛には、不倫は無理だってわかってる」

「どうしてですか?」

「あの子は、愛されたいから…。平気で、あの人の旦那さんに会いに行く」

そう言ってビールを取ってから、俺の隣に座った。俺は、平田さんの母親が、凛の家庭を息子が壊す気がするから、反対している事に気づいた。
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