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凛の話11

呼ぶ声

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「凛」

そう言われて現実に戻ってきた。

「死んだ目してたよ」

拓夢は、私の涙を拭ってくれる。

「色々、思い出しちゃってた」

「色々か…」

蓮見君に話した全てを話したら、拓夢は引くよね。

「拓夢、私」

「うん」

それでも、聞いて欲しいと思った。

「結婚するほんの少し前にね。高校の同窓会があったの」

「うん」

「行くつもりは、全然なかったんだけどね。雪乃が凛が来ないと行かないって言うから行ったの」

「うん」

「拓夢、私ね」

私は、拓夢の手を強く握りしめる。手が震えてるのがわかる。

「ひかないで」

「大丈夫」

「嫌いにならないで」

「大丈夫だよ、凛」

そう言って、拓夢は長い指先で私の涙を拭ってくれる。

「私ね、卒業式の日、蓮見君に…。首輪とか手錠とか玩具とか…。ちょっと待って」

私は、スマホを取って拓夢に画像を見せる。

「こういうの全部使われたの……死んだと思うぐらいされた」

拓夢は、その画像を見つめて泣いていた。

「怖かったね!凛」

龍ちゃんと同じ反応だった事に私は泣いていた。

「生きててよかった」

「あー、あー」

「かねやんの昔付き合ってた彼女が、かねやんと別れてからそっちの世界に連れてかれたから知ってる。めちゃくちゃ怖いんだってな!かねやんの彼女泣いてた。だけど、戻れないって…。その子は、彼が好きだからって!かねやんは、何度も別れろって言ったんだけどさ…。彼女は、嫌だって言って…。結局、そっちに。意識なくなるまでされるって言ってた。怖かったろ、凛。好きになれなかっただろ?そういうの」

「うん」

「アブノーマルの世界を俺は否定しないよ!ただ、それを好きになれない人もいる。俺も好きじゃない。首絞められたから…」

「私も好きになれなかった」

拓夢は、私の涙を拭ってくれる。

「だから、私。蓮見君には、会いたくなかった」

「会ったのか?」

私は、頷いた。

「話したの?」

「うん」

「蓮見君ね、私をトイレで待ち伏せしてた」

「うん」

「俺と付き合わないかって言われたから、結婚するから無理だって言ったの」

「うん」

「そしたら、凛としてたのが忘れられないって!凛以外としても気持ちよくないって言い出したの」

「うん」

「無理だって何度も言ったの!なのに、聞いてくれなかった」

「もしかして、旦那さんにも言ってない話?」

「結婚する前の話だから…。言わなかった。言って、結婚しないって言われたくなかったの」

「凛、泣かないで」

墓場まで持っていくと決めた話を私は拓夢に話そうとしていた。重い荷物を拓夢に渡そうとしていた。
    
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