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凛の話11

さよならと真実

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「ハァ、ハァ、凛ちゃん初めてだったんだね。ほら」

そう言って、ティッシュを当てて見せてくる。出血してる。あそこが、怪我してるみたいに痛い。私は、服を着る。

ガタッ…。

「うまく立ち上がれないでしょ?ちょっと休んだら?」

早く帰りたいのに、体が言うことを聞いてくれない。それでも、私は必死で立ち上がった。

「無理しないでいいんだよ!初めてだと辛いでしょ?」

勝ち誇ったみたいにニヤニヤ笑ってる。

「どうして?こんな事」

上野さんは、起き上がって煙草に火をつける。

「俺ね、初めて見た時から凛ちゃんとセックスしたかったんだよ」

「何でですか?」

「こんな綺麗な子と出来る機会なんてそんなないだろ?だからだよ!」 

そう言って、おかしそうに笑ってる。

「でも、最高だったよ!凛ちゃんは、遊んでると思ったのに初めてだったし!何より、気持ちよかった。凛ちゃんもだろ?」

「帰ります」

私は、そう言って上野さんの家を後にした。泣きながら、家に帰った。下半身の違和感は、消えなかった。

ブー、ブー。バイブにしていた携帯が鳴ってる。

【着信中ー蓮見君】

ディスプレイに表示された名前を見つめながら泣いていた。

「ごめんなさい、今日はお腹が痛くて行けそうにありません。本当に、ごめんなさい」

口に出しながら、メッセージを打った。涙が止まらない。蓮見君と付き合いたかった。そのまま、冬休みに入ったから蓮見君には会わなかった。初めてを失くした事なんて夢ならいいのに…。年が明けて、学校が始まった。

「凛ちゃん」

蓮見君が、私を見つけて声をかけてきてくれた。

「凛ちゃん、あの日言えなかったから言うね!俺ね、好きなんだ!だから、凛ちゃん付き合おう!」

こんなに嬉しい事がある?こんなに人生で嬉しい事がある?

「ごめんなさい、私。蓮見君とは付き合えない」

胸が苦しい。心臓がどこにあるかわかるぐらいギュウってされてる。

「何で?凛ちゃん」

「ごめんなさい。無理なの」

私は、走ってその場を去った。トイレに入った。ごめんなさい。蓮見君。私は、トイレで泣いていた。女の子が入ってくる。

「ねぇ、ねぇ、便所の話聞いた?」

「聞いた、聞いた」

「友達売って金稼ぎ出したんだって」

「大学生の金持ちでしょ?上野だっけ」

「そうそう!」

「志津村柚希(しずむらゆずき)もやられたって」

「可哀想、処女だったんでしょ?」

「処女は、これだけ出すらしいよ」

「えー、10万って事?」

「うん」

「いい小遣い稼ぎだって!だから、便所にみんな近づかないんでしょ?」

「そうそう」

「あっ、あの子大丈夫なのかな?」

「凛ちゃんって呼ばれてる子」

「そうそう!美人は、これらしいから」

「マジで!30もくれんの?そりゃあ、便所もやるわ」

「遅刻する、行こう」

「うん」

そう言って、女の子達はいなくなった。
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