上 下
202 / 646
拓夢の話10

凛の悲しみ

しおりを挟む
『ハァ、ハァ、ハァ』

俺と凛の息が重なり合う。

「ありがとう、凛」

俺は、凛から離れた。近くにあったティッシュを取って、凛を拭いてあげる。俺も、避妊具を縛って、ゴミに捨てて拭いた。俺は、パンツをはいて凛の隣に横になった。

「ありがとう、凛」

凛は、首を左右に振って笑った。

「凛の初めては素敵だったんだろ?」

俺の言葉に凛は、目を伏せた。

「違うの?」

凛は、ゆっくり頷いた。

「じゃあ、凛の初めては俺だね」

横向きに寝転がって、俺は凛の両手を包み込むように握りしめる。

「私も、話してあげる」

凛は、そう言ってその手をキスするぐらいの距離に持っていく。

「凛の初めて?」

「うん」

凛は、そう言ってその手越しに俺を見つめる。その手が震えてるのを感じる。

「私はね!17歳だった。高校二年生の頃でね」

「うん」

「その時、仲良かった友達が大学生の彼氏がいたの」

「うん」

「その子が、彼氏と彼氏の友達とクリスマスパーティーするから!凛ちゃんも来てって言うの」

「うん」

「いいよって!実際は、12月23日だったから行ったの」

「うん」

「それで、その子の彼氏の友達の家でクリスマスパーティーやってね!楽しかったんだけど!だけど、何かね。頭がグラグラして私寝ちゃったの」

凛は、そう言って涙を流し始める。

「目が覚めたら、頭が痛くて…。友達はいなくて…。友達の彼氏の友達が、私の上に座ってた」

「凛」

俺は、凛の涙を拭った。

「初めてなのに…。凛ちゃんみたいな綺麗な子はいろんなやつとしてるんだろうって笑ってるの」

「もう、いいよ!凛」

凛は、首を横に振って話す。

「嫌だって言ったの!降りてって言ったの!なのに、その人の力の方が強かった。無理矢理キスされて、無理矢理服を脱がされて、暴れると嫌だって言うと彼はさらに興奮した」

「凛、もういい」

「よくない!聞いて…。嫌だってまた言ったの!今日は、好きな人に会うからって…。そしたら、初めての女って重たくて気持ち悪いよって笑ったの」

俺は、凛の初めてを奪ったやつが許せなかった。

「私ね、その言葉に流されて泣きながらしちゃってた」

「凛」

「だから、私も汚いんだよ」

「凛は、汚くない」

俺は、凛の手を握りしめる。

「蓮見君が好きだったの!12月24日、蓮見君とデートだったの。勇気だして誘ったの。二年間片想いしてたから…。そしたらね、いいよって言ってくれたの」

凛は、あの頃を思い出してボロボロ泣いてる。泣きながら、手が震えてる。

「私、待ち合わせ場所に行けなかった」

「凛、泣かないで」

「そしたらね、学校が始まったら蓮見君が好きだって!だから、凛ちゃん付き合おうって!あの日、私、ドタキャンしたのに許してくれたの」

凛は、そう言ってボロボロ泣きながら深呼吸をする。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

裏切りの先にあるもの

マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。 結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

(完結)私はあなた方を許しますわ(全5話程度)

青空一夏
恋愛
 従姉妹に夢中な婚約者。婚約破棄をしようと思った矢先に、私の死を望む婚約者の声をきいてしまう。  だったら、婚約破棄はやめましょう。  ふふふ、裏切っていたあなた方まとめて許して差し上げますわ。どうぞお幸せに!  悲しく切ない世界。全5話程度。それぞれの視点から物語がすすむ方式。後味、悪いかもしれません。ハッピーエンドではありません!

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

処理中です...