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拓夢の話10

秘密と苦しみ…

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俺は、まっつんのお母さんに嫌な思いをさせないように、首を横に振った。

「今日の事は、忘れましょう!事故だと思って」

「は、はい」

忘れられるはずなかった。

「いい子ね!」

そう言って、頭を優しく撫でられる。

「どうも」

「じゃあ、私。帰るね」

そう言って、まっつんの母親は帰って行った。俺は、身体中に刻まれたまっつんの母親の痕跡を抱えたままだった。
拭いされないまま、夜、練習でまっつんに会った。

「拓夢、昨日ごめんな」

肩を叩かれて、ビクッとした。

「どうした?」

「あー、ごめん」

「あいつ何かほっといたらよかったんだよ」

「女の人だから」

「関係ねーよ!あいつは、誰かれ構わず寝るような女だから!心配なんかしなくていいよ」

「お母さん、苦しんでたよ」

「あー、あんなパフォーマンスほっときゃいいって」

「そうは、見えなかったけど」

俺の言葉にまっつんは、俺を見つめる。

「あの女とセックスしたか?」

「はっ?はぁ?」

「なわけねーよな!あいつと拓夢がやってたら俺は友達やめてるわ!気持ち悪いからさー」

気持ち悪い、友達やめてる。その言葉が、グサグサと胸を刺した。

「ごめん、トイレ」

俺は、走ってトイレに行った。

ヤバい!バレちゃ駄目だ!絶対に、バレちゃ駄目だ。足が、ガタガタ震えてくる。吐き気が込み上げてくる。何で、しちゃったんだよ!馬鹿か俺…。

まっつんの母親の拒絶しないで欲しいって目に、吸い込まれるようにそうなってた。思い出すな!思い出すな!

コンコンー

「はい」

「拓夢、大丈夫か?腹痛いの?」

声をかけてきたのは、智だった。

「ちょっと調子悪い」

「そっか、無理すんなよ」

誰にも言えなかった。ずっと、言えなくて…。苦しくて、死にそうで。あの事を上書き出来る人はいなかった。明日花ちゃんも、無理だった。

なのに…。

「拓夢」

凛が初めて忘れさせてくれた。

気づくと頭を抱えていた。俺は、スマホを取って凛のメッセージを指でなぞる。

「だから、俺。凛に執着してる」

俺の話聞いたら、軽蔑するよな!楽になりたい。秘密を抱えて歩いて行くのは、しんどくて…。辛くて…。でも、俺が荷物を下ろせば凛に背負わすんだ。凛は、誰にも言えないまま、俺の荷物を背負って一生歩く。そう考えたら、言えない。
気づいたら、後、三十分で晩御飯が終わる時間だった。

「あの」

平田さんの母親に声をかける。

「イッター。ごめん、時間?」

「はい」

「行こうか」

そう言って、平田さんの母親は立ち上がった。さっきのキスも墓場まで…。俺は、どれだけ抱えなきゃならないんだ。

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