上 下
189 / 646
凛の話10

その人は、越えれない

しおりを挟む
凛君は、私の手を握りしめてくる。

「どうしたの?」

「ううん、その人を越えられないね。僕は…」

「その人?」

「旦那さんでしょ?今の電話…」

「うん、そう」

「凛さんを穏やかにする人なんだね」

「ごめんね」

「何で?謝るの?」

凛君は、そう言って私の頬に手を当てる。

「だって、私。凛君を今傷つけたよね」

「ううん。星村さんが言った言葉の意味が理解出来ただけだよ」

「拓夢が言った言葉?」

「うん。凛さんは、僕も星村さんも好きにならない」

「そんな事…」

「あるんだよ!そんな顔させれるのは、旦那さんだけだから…。でも、今日の凛さんを支えるのは僕だから」

「うん」

「お酒飲んでいいよ」

そう言って、凛君はコンビニの袋からチューハイを取ってくれる。

「どうぞ」

「ありがとう」

プシュと開けた私に、凛君は紙コップを差し出してくれる。私は、トクトクと注いだ。

ゴクッゴクッと飲む。

「ケーキ食べよう」

凛君の手が、カタカタと震える。

「食べさせてあげようか?」

「うん」

私の言葉に凛君は、フォークを渡してくれる。私は、チーズケーキを取って凛君に食べさせてあげる。

「あーん」

「あーん」

ゆっくり口に入れてあげる。凛君は、飲み込めなくて固まってる。

「出していいんだよ!無理しちゃ駄目だよ」

私は、凛君の頬を撫でる。凛君は、その手を掴んで見つめてくる。

【きっと、勘違いなのかもしれない。それでも、優しくされたくて…。嘘でも言われたいんだよ!愛してるって】

頭の中を響く言葉に導かれるように、私は凛君に囁いた。

「愛してる」

凛君は、驚いた顔をしてゴクッとチーズケーキを飲み込んでしまった。

「ゲホッ、ゴホッ、ゴホッ」

「大丈夫?」

私は、背中を擦った。

「ゴホッ、ゴホッ」

凛君は、ミルクティーをゴクッゴクッと飲んだ。

「大丈夫?凛君」

「大丈夫、大丈夫。あー、ビックリして飲んじゃった」

「ごめんね。ビックリするよね」

私は、恥ずかしくなってゴクッゴクッとチューハイを飲んだ。

「照れてる?凛さん」

「どうだろうね?」

凛君は、私の頬をプニプニと押してくる。

「やめてよー」

「可愛いよ、凛さん」

頭を優しく撫でてくれる。

「気持ち悪くない?」

「凛さんのお陰で、大丈夫だよ!」

「よかった」

私は、凛君の頭を撫でる。

「チーズケーキ美味しいね」

「うん」

やっぱりドキドキする。だけど、それ以上に凛君が笑ってくれる事に安心する。私は、チューハイを飲み干した。

「はい」

「ありがとう」

新しいチューハイを差し出される。

「それ、りんごジュースみたいな感じ?アップル味でしょ?」

「うん」

さっきから飲んでる林檎チューハイの味を聞かれる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Princess story 〜御曹司とは付き合いません〜

鳴宮鶉子
恋愛
Princess story 〜御曹司とは付き合いません〜

2度目の人生は好きにやらせていただきます

みおな
恋愛
公爵令嬢アリスティアは、婚約者であるエリックに学園の卒業パーティーで冤罪で婚約破棄を言い渡され、そのまま処刑された。 そして目覚めた時、アリスティアは学園入学前に戻っていた。 今度こそは幸せになりたいと、アリスティアは婚約回避を目指すことにする。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

彼と婚約破棄しろと言われましても困ります。なぜなら、彼は婚約者ではありませんから

水上
恋愛
「私は彼のことを心から愛しているの! 彼と婚約破棄して!」 「……はい?」 子爵令嬢である私、カトリー・ロンズデールは困惑していた。 だって、私と彼は婚約なんてしていないのだから。 「エリオット様と別れろって言っているの!」  彼女は下品に怒鳴りながら、ポケットから出したものを私に投げてきた。  そのせいで、私は怪我をしてしまった。  いきなり彼と別れろと言われても、それは無理な相談である。  だって、彼は──。  そして勘違いした彼女は、自身を破滅へと導く、とんでもない騒動を起こすのだった……。 ※この作品は、旧作を加筆、修正して再掲載したものです。

友達にいいように使われていた私ですが、王太子に愛され幸せを掴みました

麻宮デコ@ざまぁSS短編
恋愛
トリシャはこだわらない性格のおっとりした貴族令嬢。 友人マリエールは「友達だよね」とトリシャをいいように使い、トリシャが自分以外の友人を作らないよう孤立すらさせるワガママな令嬢だった。 マリエールは自分の恋を実らせるためにトリシャに無茶なお願いをするのだが――…。

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

処理中です...