上 下
188 / 646
凛の話10

三分間の電話…

しおりを挟む
『凛、何か嫌なもの見た?』

「雪がね…」

その一言で、龍ちゃんは全て気付いた。

『生きてる意味は、あるよ!俺ね、凛といると凄い楽しいよ。これに、子供何かいたら死ぬかも!幸せすぎて、俺死ぬわ』

「何、それ?」

『だから、凛が悪いんじゃないから!俺が、幸せすぎて死んじゃうから神様が作らせないんだな!長生きしたいって、俺が思ってるから』

「龍ちゃん」

『だから、凛は何も悪くないよ!俺のね、ワガママなんだよ!ごめんね!巻き込んじゃって』

「違う、私なの。私が…」

龍ちゃんは、小さく「ヤバッ」て言った後でこう言った。

『まこにね、怒られたんだわ!さっき!俺ね、まだ見ぬ赤ちゃんより。凛が大切だわ!凛と生きていきたいんだ。凛が死んだら嫌だ。耐えられない。だから、二人で生きて行ってくれないかな?俺は、凛に何が起きてるのか…。凛が何を大切にしてるかわからない事の方が多い。だけど、それが凛にとって大切な時間なら…。俺は、見守るしかないから…』

その言葉に、私は龍ちゃんが何かに気付いてる事をハッキリと感じた。それでも、龍ちゃんは私を突き放さないのがわかった。

「龍ちゃん、私。赤ちゃんが欲しい。諦めたくなかった。でもね、もうアラサーじゃない。命と引きかえかも知れないんだよね。そう考えたら、私欲しくない気持ちが生まれてきてる」

『うん』

「だから、赤ちゃん来ないんだよ。私のせいだよ」

『凛、違うよ!俺、もし凛が死んで赤ちゃんだけ残ったらって考えたら嬉しくない!可愛がれない!俺は、そんな人間だって気付いちゃったんだ』

「龍ちゃん」

『凛が死んじゃうなら、子供いらない。俺は、凛しかいらない。お爺ちゃんとお婆ちゃんになっても、凛といたい。あの、箱庭でお茶を飲みたいね』

「うん」

『あー、ごめん。時間だわ!帰ったら、ちゃんと話聞くから…。もしも』

「うん」

『もしも、今の凛を』

【せんぱーい】

「もしも?」

『ごめん。呼ばれた』

「うん」

『じゃあな』

「頑張って」

『一人でいたくないなら…。あー、ありがとう!じゃあ』

プー、プー

龍ちゃんが何を言いたかったのかわかった。

【もしも、今の凛を支えてくれる人がいて一人でいたくないなら、行けばいいんだよ】

その言葉を躊躇ったのがわかる。龍ちゃんは、私が拓夢に抱かれてるのに気付いてる。不倫してるのに、気付いてる。それでも、いらないって言わない。龍ちゃんは、世界で一番優しい人。

「いい顔するんだね」

私は、その声に顔をあげる。

「電話終わったの?」

「うん、ついさっき」

そう言って、凛君が隣に座った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妹は謝らない

青葉めいこ
恋愛
物心つく頃から、わたくし、ウィスタリア・アーテル公爵令嬢の物を奪ってきた双子の妹エレクトラは、当然のように、わたくしの婚約者である第二王子さえも奪い取った。 手に入れた途端、興味を失くして放り出すのはいつもの事だが、妹の態度に怒った第二王子は口論の末、妹の首を絞めた。 気絶し、目覚めた妹は、今までの妹とは真逆な人間になっていた。 「彼女」曰く、自分は妹の前世の人格だというのだ。 わたくしが恋する義兄シオンにも前世の記憶があり、「彼女」とシオンは前世で因縁があるようで――。 「彼女」と会った時、シオンは、どうなるのだろう? 小説家になろうにも投稿しています。

【お前を愛することはない……ことも、ない】と言ったその氷の貴公子(火属性)が描く彼女の肖像画はとても可愛い。

ぷり
恋愛
★ネトコン12一次選考通過作品(通過率約8.4%)★ お前を愛することはない、ことも……ない。  それは幼い少年と少女のお見合いの席でのトラブルであった。   彼は彼女に一目惚れだったのに素直になれないどころか、暴言を吐いてしまったのである。    果たして彼は彼女との関係修復をすることができるのだろうか?  これは小さな二人が婚約するまでの物語。  ★主人公であるルイスが6歳から話は始まりますが、メインは10歳(小等部4年生)の話となります。  ★まったりほのぼの路線で刺激の少ない物語を目指しております。  ★40話。  ※ネタバレしておくと公爵令嬢は味方?です。  ◆初めて3人称で書く習作のため、つたないところが多々あるかと思いますがどうぞよろしくお願いします。 ◆主な登場人物◆ ルイス=ヴィンケル侯爵令息 エステル=クラーセン伯爵令嬢  カンデラリア=ジョンパルト公爵令嬢 アート部長(アダルベルト美術部部長)

転生したから思いっきりモノ作りしたいしたい!

ももがぶ
ファンタジー
猫たちと布団に入ったはずが、気がつけば異世界転生! せっかくの異世界。好き放題に思いつくままモノ作りを極めたい! 魔法アリなら色んなことが出来るよね。 無自覚に好き勝手にモノを作り続けるお話です。 第一巻 2022年9月発売 第二巻 2023年4月下旬発売 第三巻 2023年9月下旬発売 ※※※スピンオフ作品始めました※※※ おもちゃ作りが楽しすぎて!!! ~転生したから思いっきりモノ作りしたいしたい! 外伝~

困りました。縦ロールにさよならしたら、逆ハーになりそうです。《改訂版》

新 星緒
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢アニエス(悪質ストーカー)に転生したと気づいたけれど、心配ないよね。だってフラグ折りまくってハピエンが定番だもの。 趣味の悪い縦ロールはやめて性格改善して、ストーカーしなければ楽勝楽勝! ……って、あれ? 楽勝ではあるけれど、なんだか思っていたのとは違うような。 想定外の逆ハーレムを解消するため、イケメンモブの大公令息リュシアンと協力関係を結んでみた。だけどリュシアンは、「惚れた」と言ったり「からかっただけ」と言ったり、意地悪ばかり。嫌なヤツ! でも実はリュシアンは訳ありらしく……

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

義母様から「あなたは婚約相手として相応しくない」と言われたので、家出してあげました。

新野乃花(大舟)
恋愛
婚約関係にあったカーテル伯爵とアリスは、相思相愛の理想的な関係にあった。しかし、それを快く思わない伯爵の母が、アリスの事を執拗に口で攻撃する…。その行いがしばらく繰り返されたのち、アリスは自らその姿を消してしまうこととなる。それを知った伯爵は自らの母に対して怒りをあらわにし…。

夫は平然と、不倫を公言致しました。

松茸
恋愛
最愛の人はもういない。 厳しい父の命令で、公爵令嬢の私に次の夫があてがわれた。 しかし彼は不倫を公言して……

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

処理中です...