183 / 646
拓夢の話9
最低でしょ?
しおりを挟む
「気づいてたのに、気づかないフリをして、凛が9歳になるまで黙って一緒にいたの」
「はい」
「問い詰めたのは、不倫相手が家にやってきたからだった。別れて欲しいって泣きながら言われた。私には、凛がいるからいいでしょって」
俺は、何も返せない。平田さんの母親は、気にせずに続ける。
「私は、凛じゃなくて彼が必要だって何度も伝えた!だけど、その人は凛がいるから彼を私にちょうだいと繰り返した。結局、折れるしかなかった。渡したくないけど、渡すしかないと思った。だけど、彼が帰ってきたの…。何も知らずに…。私は、怒りに任せて彼に全てをぶつけたわ!」
そう言うと、平田さんの母親の目から大粒の涙が流れ落ちる。俺は、ティッシュを取って渡した。
「ありがとう」
「いえ」
彼女は、涙を拭うと息を
整えて話しだす。
「彼はね。彼女は、悪くないって!悪いのは、全部俺だからって言ったの!それで、君は強いから大丈夫だからって!だから、君は一人で生きて行けるよって!」
俺は、頷くしか出来なかった。
「凛は、連れて行くって言うから!どうぞって言ったの!」
そう言って、平田さんの母親はビールをまた飲んだ。
「なのに、あの子!母さんが一人になったら生きていけないから!僕は、残るからとか言い出したのよ!私なんか捨てればよかったのに…」
そう言って、涙を拭いてから目にティシュを当ててる。
「だけど、私は彼と凛と生きていきたくて!私の中で、凛は彼といるから欲しかった存在で…。彼がいなくなったら、いらなかった。だから、凛に私は言ったの!あんたなんか死んじゃえって!」
俺は、その言葉にまっつんが平田さんの事を応援しようとした理由がわかった。
「私、最低でしょ?」
「はい」
俺は、素直に口に出してしまって、口を押さえる。
「わかってる」
平田さんの母親は、ビールをゴクッゴクッと飲んでから俺を見つめる。
「すみません」
「謝らなくていい!本当の事だから…」
「だから、不倫させたくないんですね?自分と同じ人を作りたくないんですよね?」
「そんな立派なもんじゃない!凛に、父親と同じ人間になって欲しくないだけよ」
そう言って、またビールを飲んだ。俺も珈琲をゴクリと飲む。
「私は、凛を産まなきゃよかったって思ってる。それは、一生変わらない。だって、私には彼が全てだったから…。何度かやったけど凛を私は殺せなかった。それが、愛なのか何なのか自分でもわからない。わからないけど、凛に間違った事はして欲しくない」
そう言って、平田さんの母親はビールを飲み干した。彼女も苦しんでいる気が俺にはしている。愛する人に不倫され捨てられ…。愛していた人の子供を愛せなくなったのだから…。
「星村さん、不倫は誰も幸せにしない」
俺は、平田さんの母親に顔を覗き込まれてそう言われた。当事者である彼女の言葉はあまりにも重く俺の肩にのし掛かる。
「はい」
「問い詰めたのは、不倫相手が家にやってきたからだった。別れて欲しいって泣きながら言われた。私には、凛がいるからいいでしょって」
俺は、何も返せない。平田さんの母親は、気にせずに続ける。
「私は、凛じゃなくて彼が必要だって何度も伝えた!だけど、その人は凛がいるから彼を私にちょうだいと繰り返した。結局、折れるしかなかった。渡したくないけど、渡すしかないと思った。だけど、彼が帰ってきたの…。何も知らずに…。私は、怒りに任せて彼に全てをぶつけたわ!」
そう言うと、平田さんの母親の目から大粒の涙が流れ落ちる。俺は、ティッシュを取って渡した。
「ありがとう」
「いえ」
彼女は、涙を拭うと息を
整えて話しだす。
「彼はね。彼女は、悪くないって!悪いのは、全部俺だからって言ったの!それで、君は強いから大丈夫だからって!だから、君は一人で生きて行けるよって!」
俺は、頷くしか出来なかった。
「凛は、連れて行くって言うから!どうぞって言ったの!」
そう言って、平田さんの母親はビールをまた飲んだ。
「なのに、あの子!母さんが一人になったら生きていけないから!僕は、残るからとか言い出したのよ!私なんか捨てればよかったのに…」
そう言って、涙を拭いてから目にティシュを当ててる。
「だけど、私は彼と凛と生きていきたくて!私の中で、凛は彼といるから欲しかった存在で…。彼がいなくなったら、いらなかった。だから、凛に私は言ったの!あんたなんか死んじゃえって!」
俺は、その言葉にまっつんが平田さんの事を応援しようとした理由がわかった。
「私、最低でしょ?」
「はい」
俺は、素直に口に出してしまって、口を押さえる。
「わかってる」
平田さんの母親は、ビールをゴクッゴクッと飲んでから俺を見つめる。
「すみません」
「謝らなくていい!本当の事だから…」
「だから、不倫させたくないんですね?自分と同じ人を作りたくないんですよね?」
「そんな立派なもんじゃない!凛に、父親と同じ人間になって欲しくないだけよ」
そう言って、またビールを飲んだ。俺も珈琲をゴクリと飲む。
「私は、凛を産まなきゃよかったって思ってる。それは、一生変わらない。だって、私には彼が全てだったから…。何度かやったけど凛を私は殺せなかった。それが、愛なのか何なのか自分でもわからない。わからないけど、凛に間違った事はして欲しくない」
そう言って、平田さんの母親はビールを飲み干した。彼女も苦しんでいる気が俺にはしている。愛する人に不倫され捨てられ…。愛していた人の子供を愛せなくなったのだから…。
「星村さん、不倫は誰も幸せにしない」
俺は、平田さんの母親に顔を覗き込まれてそう言われた。当事者である彼女の言葉はあまりにも重く俺の肩にのし掛かる。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
先生、生徒に手を出した上にそんな淫らな姿を晒すなんて失格ですよ
ヘロディア
恋愛
早朝の教室に、艶やかな喘ぎ声がかすかに響く。
それは男子学生である主人公、光と若手美人女性教師のあってはならない関係が起こすものだった。
しかしある日、主人公の数少ない友達である一野はその真実に気づくことになる…
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
王妃の私には妾妃の貴女の考えなどお見通し
麻宮デコ@ざまぁSS短編
恋愛
王太子妃となったミリアリアは不妊症であると医者に告げられ嘆き悲しむ。
そんなミリアリアに従妹のクローディアは自分が代わりに王の子供を産むと宣言した。
世継ぎを産み育てる役割だけはクローディアに。
それ以外の役割はミリアリアに。
そして宣言通り、クローディアは王子を出産した。
月日が経ち、ミリアリアは王太子妃から王妃になったが、そんな中で夫である王が急死してしまった。
ミリアリアはまだ年若い王子に王位を継がせずに自分が即位することにし、今まで表に出せなかった真実を露わにしていく。
全4話。
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
50歳前の離婚
家紋武範
恋愛
子なしの夫婦。夫は妻から離婚を切り出された。
子供が出来なかったのは妻に原因があった。彼女はそれを悔いていた。夫の遺伝子を残したいと常に思っていたのだ。
だから別れる。自分以外と結婚して欲しいと願って。
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる