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拓夢の話9
最低でしょ?
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「気づいてたのに、気づかないフリをして、凛が9歳になるまで黙って一緒にいたの」
「はい」
「問い詰めたのは、不倫相手が家にやってきたからだった。別れて欲しいって泣きながら言われた。私には、凛がいるからいいでしょって」
俺は、何も返せない。平田さんの母親は、気にせずに続ける。
「私は、凛じゃなくて彼が必要だって何度も伝えた!だけど、その人は凛がいるから彼を私にちょうだいと繰り返した。結局、折れるしかなかった。渡したくないけど、渡すしかないと思った。だけど、彼が帰ってきたの…。何も知らずに…。私は、怒りに任せて彼に全てをぶつけたわ!」
そう言うと、平田さんの母親の目から大粒の涙が流れ落ちる。俺は、ティッシュを取って渡した。
「ありがとう」
「いえ」
彼女は、涙を拭うと息を
整えて話しだす。
「彼はね。彼女は、悪くないって!悪いのは、全部俺だからって言ったの!それで、君は強いから大丈夫だからって!だから、君は一人で生きて行けるよって!」
俺は、頷くしか出来なかった。
「凛は、連れて行くって言うから!どうぞって言ったの!」
そう言って、平田さんの母親はビールをまた飲んだ。
「なのに、あの子!母さんが一人になったら生きていけないから!僕は、残るからとか言い出したのよ!私なんか捨てればよかったのに…」
そう言って、涙を拭いてから目にティシュを当ててる。
「だけど、私は彼と凛と生きていきたくて!私の中で、凛は彼といるから欲しかった存在で…。彼がいなくなったら、いらなかった。だから、凛に私は言ったの!あんたなんか死んじゃえって!」
俺は、その言葉にまっつんが平田さんの事を応援しようとした理由がわかった。
「私、最低でしょ?」
「はい」
俺は、素直に口に出してしまって、口を押さえる。
「わかってる」
平田さんの母親は、ビールをゴクッゴクッと飲んでから俺を見つめる。
「すみません」
「謝らなくていい!本当の事だから…」
「だから、不倫させたくないんですね?自分と同じ人を作りたくないんですよね?」
「そんな立派なもんじゃない!凛に、父親と同じ人間になって欲しくないだけよ」
そう言って、またビールを飲んだ。俺も珈琲をゴクリと飲む。
「私は、凛を産まなきゃよかったって思ってる。それは、一生変わらない。だって、私には彼が全てだったから…。何度かやったけど凛を私は殺せなかった。それが、愛なのか何なのか自分でもわからない。わからないけど、凛に間違った事はして欲しくない」
そう言って、平田さんの母親はビールを飲み干した。彼女も苦しんでいる気が俺にはしている。愛する人に不倫され捨てられ…。愛していた人の子供を愛せなくなったのだから…。
「星村さん、不倫は誰も幸せにしない」
俺は、平田さんの母親に顔を覗き込まれてそう言われた。当事者である彼女の言葉はあまりにも重く俺の肩にのし掛かる。
「はい」
「問い詰めたのは、不倫相手が家にやってきたからだった。別れて欲しいって泣きながら言われた。私には、凛がいるからいいでしょって」
俺は、何も返せない。平田さんの母親は、気にせずに続ける。
「私は、凛じゃなくて彼が必要だって何度も伝えた!だけど、その人は凛がいるから彼を私にちょうだいと繰り返した。結局、折れるしかなかった。渡したくないけど、渡すしかないと思った。だけど、彼が帰ってきたの…。何も知らずに…。私は、怒りに任せて彼に全てをぶつけたわ!」
そう言うと、平田さんの母親の目から大粒の涙が流れ落ちる。俺は、ティッシュを取って渡した。
「ありがとう」
「いえ」
彼女は、涙を拭うと息を
整えて話しだす。
「彼はね。彼女は、悪くないって!悪いのは、全部俺だからって言ったの!それで、君は強いから大丈夫だからって!だから、君は一人で生きて行けるよって!」
俺は、頷くしか出来なかった。
「凛は、連れて行くって言うから!どうぞって言ったの!」
そう言って、平田さんの母親はビールをまた飲んだ。
「なのに、あの子!母さんが一人になったら生きていけないから!僕は、残るからとか言い出したのよ!私なんか捨てればよかったのに…」
そう言って、涙を拭いてから目にティシュを当ててる。
「だけど、私は彼と凛と生きていきたくて!私の中で、凛は彼といるから欲しかった存在で…。彼がいなくなったら、いらなかった。だから、凛に私は言ったの!あんたなんか死んじゃえって!」
俺は、その言葉にまっつんが平田さんの事を応援しようとした理由がわかった。
「私、最低でしょ?」
「はい」
俺は、素直に口に出してしまって、口を押さえる。
「わかってる」
平田さんの母親は、ビールをゴクッゴクッと飲んでから俺を見つめる。
「すみません」
「謝らなくていい!本当の事だから…」
「だから、不倫させたくないんですね?自分と同じ人を作りたくないんですよね?」
「そんな立派なもんじゃない!凛に、父親と同じ人間になって欲しくないだけよ」
そう言って、またビールを飲んだ。俺も珈琲をゴクリと飲む。
「私は、凛を産まなきゃよかったって思ってる。それは、一生変わらない。だって、私には彼が全てだったから…。何度かやったけど凛を私は殺せなかった。それが、愛なのか何なのか自分でもわからない。わからないけど、凛に間違った事はして欲しくない」
そう言って、平田さんの母親はビールを飲み干した。彼女も苦しんでいる気が俺にはしている。愛する人に不倫され捨てられ…。愛していた人の子供を愛せなくなったのだから…。
「星村さん、不倫は誰も幸せにしない」
俺は、平田さんの母親に顔を覗き込まれてそう言われた。当事者である彼女の言葉はあまりにも重く俺の肩にのし掛かる。
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