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凛の話9

じゃあ、また…

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「駅まで行くね」

「はい、お願いします」

しゅんさんは、車を出してくれて拓夢の家の近くの駅に連れてきてくれた。

「じゃあね、凛さん」

「はい、さようなら!気をつけて帰って下さいね」

「今から、仕事だよー」

「あっ!私のせいで、ごめんなさい」

「いやいや、凛さんのせいじゃないよ!九時半からだから、気にしないで!じゃあね」

「はい、さよなら」

私は、しゅんさんに手を振った。拓夢との事は、もうどうにもならないんだよね。駅で切符を買って、改札を抜けてホームについた。

ブー、ブー。

私は、スマホを見つめる。

【今日も会えますか?】

【いいよ】

【じゃあ、また後で!あっ、晩御飯は四人で食べましょう】

【はい】

凛君からのメッセージに返事を返した。私は、拓夢の連絡先を見つめていた。もう、終わりなんだよね。私と拓夢は、もう噛み合っていない気がする。もう、別の場所に進んで行ってる気がする。
違う?拓夢。
もし、違うなら何で連絡くれないの…。
私は、やってきた電車に乗り込んだ。最寄りの駅でついて降りて歩き出す。改札を抜けて、虹色の傘だけを返して欲しかった。

「あら、おはようございます」

「あっ、おはようございます」

まさか、坂東さんに会ってしまった。

「朝から、どこかに?」

「いえ、友達がちょっと体調崩しちゃって、様子を見に…」

「へー。友達…」

「はい」

苦笑いにならないように気をつけて笑う。

「皆月さん、大変ね!まだ、若いでしょ?友達も」

「あー、そうですね」

「若い頃って色々あるから大変よねー。まぁ、皆月さんが不倫なんかしていなくなっちゃったら私寂しいわー」

いやいや、さっきから釘を打ち付けてくる。

「それは…」

「皆月さんに限ってないわよねー。じゃあ、またね」

坂東さんは、ニコニコ笑っていなくなってしまった。

「ハァー」

疲れた。凄く、凄く、疲れた。私は、ポストを開ける。子供向けの勧誘チラシがたくさん入ってる。鍵を開けて、そのチラシをぐちゃぐちゃに丸める。リビングに行って、ゴミ箱に捨てた。

「嫌がらせ」

そんな言葉を言って捨てる。

若い時は、こんなチラシにイライラも悲しくもならなかった。何の感情も揺さぶられなかった。「もう、ゴミになるしー」ぐらいの感覚だった。それが、今はこんなチラシ一つで私は人生を呪い。消えたくなる。絶望で染まってく。ダイニングの椅子に座って、頭を机に置いた。
スマホを開いて、あの掲示板を覗く。

【仲間だと思ったのに、妊娠したとたんに、私はこれでとかって言ってきた】悲しい文章。

【もう、年齢的に無理なのわかってるのに諦めたくない。どうしよう】わかるよ。凄くわかる。

【最後のチャンスも駄目でした】彼女は、どんな未来を歩いて行くんだろうか?

私は、掲示板を閉じる。
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