上 下
170 / 646
凛の話9

じゃあ、また…

しおりを挟む
「駅まで行くね」

「はい、お願いします」

しゅんさんは、車を出してくれて拓夢の家の近くの駅に連れてきてくれた。

「じゃあね、凛さん」

「はい、さようなら!気をつけて帰って下さいね」

「今から、仕事だよー」

「あっ!私のせいで、ごめんなさい」

「いやいや、凛さんのせいじゃないよ!九時半からだから、気にしないで!じゃあね」

「はい、さよなら」

私は、しゅんさんに手を振った。拓夢との事は、もうどうにもならないんだよね。駅で切符を買って、改札を抜けてホームについた。

ブー、ブー。

私は、スマホを見つめる。

【今日も会えますか?】

【いいよ】

【じゃあ、また後で!あっ、晩御飯は四人で食べましょう】

【はい】

凛君からのメッセージに返事を返した。私は、拓夢の連絡先を見つめていた。もう、終わりなんだよね。私と拓夢は、もう噛み合っていない気がする。もう、別の場所に進んで行ってる気がする。
違う?拓夢。
もし、違うなら何で連絡くれないの…。
私は、やってきた電車に乗り込んだ。最寄りの駅でついて降りて歩き出す。改札を抜けて、虹色の傘だけを返して欲しかった。

「あら、おはようございます」

「あっ、おはようございます」

まさか、坂東さんに会ってしまった。

「朝から、どこかに?」

「いえ、友達がちょっと体調崩しちゃって、様子を見に…」

「へー。友達…」

「はい」

苦笑いにならないように気をつけて笑う。

「皆月さん、大変ね!まだ、若いでしょ?友達も」

「あー、そうですね」

「若い頃って色々あるから大変よねー。まぁ、皆月さんが不倫なんかしていなくなっちゃったら私寂しいわー」

いやいや、さっきから釘を打ち付けてくる。

「それは…」

「皆月さんに限ってないわよねー。じゃあ、またね」

坂東さんは、ニコニコ笑っていなくなってしまった。

「ハァー」

疲れた。凄く、凄く、疲れた。私は、ポストを開ける。子供向けの勧誘チラシがたくさん入ってる。鍵を開けて、そのチラシをぐちゃぐちゃに丸める。リビングに行って、ゴミ箱に捨てた。

「嫌がらせ」

そんな言葉を言って捨てる。

若い時は、こんなチラシにイライラも悲しくもならなかった。何の感情も揺さぶられなかった。「もう、ゴミになるしー」ぐらいの感覚だった。それが、今はこんなチラシ一つで私は人生を呪い。消えたくなる。絶望で染まってく。ダイニングの椅子に座って、頭を机に置いた。
スマホを開いて、あの掲示板を覗く。

【仲間だと思ったのに、妊娠したとたんに、私はこれでとかって言ってきた】悲しい文章。

【もう、年齢的に無理なのわかってるのに諦めたくない。どうしよう】わかるよ。凄くわかる。

【最後のチャンスも駄目でした】彼女は、どんな未来を歩いて行くんだろうか?

私は、掲示板を閉じる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~

緑谷めい
恋愛
 ドーラは金で買われたも同然の妻だった――  レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。 ※ 全10話完結予定

売れ残り同士、結婚します!

青花美来
恋愛
高校の卒業式の日、売り言葉に買い言葉でとある約束をした。 それは、三十歳になってもお互いフリーだったら、売れ残り同士結婚すること。 あんなのただの口約束で、まさか本気だなんて思っていなかったのに。 十二年後。三十歳を迎えた私が再会した彼は。 「あの時の約束、実現してみねぇ?」 ──そう言って、私にキスをした。 ☆マークはRシーン有りです。ご注意ください。 他サイト様にてRシーンカット版を投稿しております。

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...