上 下
166 / 646
凛の話9

いい…

しおりを挟む
「朝早くに迷惑だから、いいです」

私の言葉に、しゅんさんは時計を見た。

「大丈夫!俺達なら、普通にあるから」

そう言って笑ってくれる。

「だから、凛さんはそっちで待ってて」

「わかりました」

私は、頷いてエレベーターの方に向かった。そこから、拓夢の部屋を見つめていた。しゅんさんは、インターホンを鳴らした。ピンポーンと響いてる。一回じゃ拓夢は、出なくて二回目を押していた。扉が開いた。

「おはよう、傘返して」

「しゅん、おはよう」

拓夢の声が響いてる。

「うん、傘返して」

しゅんさんは、もう一度言った。

「嫌だ」

拓夢の言葉にしゅんさんは驚いて「えぇ!」って声をあげた。

「つうか、何の傘?」

「凛さんの傘だよ」

「はあ?何で、しゅんに渡すんだよ」

「まっつんに言われて、取りに来たんだよ」

「チッ!余計な事」

寝起きだから、イライラしているのだろうか?拓夢の苛立った声が聞こえる。

「美紗ちゃんといるんだろ?返せよ」

しゅんさんも、イライラしだして拓夢に怒りだした。

「何でだよ!凛が直接取りにくればいいだろ?」

「拓夢、傷つけてよくそんな事が言えるよな!」

「そんなつもりなくて」

「つもりないって何だよ!嫌だってあんだけ言ってたのに、美紗ちゃんと会って!かねやん、拓夢の為に智に連絡したんだぞ!なのに…。抱けたら、誰でもいいのかよ」

「そうだよ!」

私は、その言葉に驚いていた。

「マジで、行ってんのか?」 

「しょうがないだろ?」

しょうがない…。私は、気づくと走り出そうとしてて…。

「待って、凛さん」

「凛がいんのか?」

「最低だな!」

しゅんさんの声が響いてて、私は階段をかけ降りてく。

「待って」

走って、走って、一階についた。

「はぁ、はぁ、はぁ」

抱けたら誰でもいいと言う言葉に、私は馬鹿だと思った。

「凛」

私の腕を掴んだのは、しゅんさんじゃなかった。

「離して」

「何で、逃げんの?」

私は、その声に顔をあげれなかった。どんな顔してる?笑ってたら嫌!泣いていても意味がわからない!

「離せよ、拓夢」

私の腕を掴んでる拓夢の手をしゅんさんが離そうとしてるのが見える。

「凛、話ししよう」

私は、俯いたまま首を横に振る。

「何で?」

「嫌です」

「何で?って聞いてるの!」

私は、その言葉に勇気を振り絞って拓夢の顔を見た。

「私にとって、抱き合う事は怖い行為だったから…。それを変えてくれた拓夢を嫌いにさせないで」

涙で、拓夢が滲んでく。

「離せ」

しゅんさんが、拓夢の腕を離してくれた。

「凛」

拓夢は、複雑な表情を浮かべていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

結婚しましたが、愛されていません

うみか
恋愛
愛する人との結婚は最悪な結末を迎えた。 彼は私を毎日のように侮辱し、挙句の果てには不倫をして離婚を叫ぶ。 為す術なく離婚に応じた私だが、その後国王に呼び出され……

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

【完結】竜人が番と出会ったのに、誰も幸せにならなかった

凛蓮月
恋愛
【感想をお寄せ頂きありがとうございました(*^^*)】  竜人のスオウと、酒場の看板娘のリーゼは仲睦まじい恋人同士だった。  竜人には一生かけて出会えるか分からないとされる番がいるが、二人は番では無かった。  だがそんな事関係無いくらいに誰から見ても愛し合う二人だったのだ。 ──ある日、スオウに番が現れるまでは。 全8話。 ※他サイトで同時公開しています。 ※カクヨム版より若干加筆修正し、ラストを変更しています。

子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。

さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。 忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。 「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」 気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、 「信じられない!離縁よ!離縁!」 深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。 結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

真実の愛は、誰のもの?

ふまさ
恋愛
「……悪いと思っているのなら、く、口付け、してください」  妹のコーリーばかり優先する婚約者のエディに、ミアは震える声で、思い切って願いを口に出してみた。顔を赤くし、目をぎゅっと閉じる。  だが、温かいそれがそっと触れたのは、ミアの額だった。  ミアがまぶたを開け、自分の額に触れた。しゅんと肩を落とし「……また、額」と、ぼやいた。エディはそんなミアの頭を撫でながら、柔やかに笑った。 「はじめての口付けは、もっと、ロマンチックなところでしたいんだ」 「……ロマンチック、ですか……?」 「そう。二人ともに、想い出に残るような」  それは、二人が婚約してから、六年が経とうとしていたときのことだった。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

処理中です...