上 下
160 / 646
拓夢の話8

最低だな!!

しおりを挟む
お尻のポケットから、スマホを取り出した。

「ごめん、まっつんだわ」

「出ていいよ」

「ごめん」

俺は、立ち上がってダイニングテーブルの椅子に座って電話に出る。

「もしもし」

『お前、何してんだよ』

まっつんは、凄く怒っていた。

「何って?」

『凛さん、壊れそうなぐらい泣いてるんだぞ』

その言葉に、胸が締め付けられて苦しくなる。

「そう」

『もういいのかよ!』

まっつんは、泣いてるみたいな声でそう言った。

「仕方ないよ」

『結婚してるからか?不倫だからか?』

「それもある」

その言葉にまっつんが怒った。

『だったら、最初から凛さんの人生を振り回してんじゃねーぞ』

まっつんは、めちゃくちゃ怒っている時は、喋り方に感情が乗っていない。

「まっつんに関係ないだろ?」

『お前、最低だな!お前が、関わらなかったら凛さんは苦しまなかったんだぞ!』

「何だよ!まっつんは、そっちの味方かよ」

まっつんは、俺の言葉にさらに怒って話した。

『味方も敵もねーよ。凛さんが、どれだけ子供を切望してたかわかってんだろ?』

「だから、何だよ」

『お前への切望も絶望に変わったんだよ』

その言葉に、俺は固まっていた。

『意味理解出来てないなら言ってやるよ!旦那さんがいなかったら、明日花ちゃんみたいになってたぞ!』

その言葉に俺の手が震える。まっつんは、俺に止めをさすように最後にこう言った。

『それと、もう一つ言うけど…。俺は、平田君を応援するから』

「はぁ?何だよ!それ」

やっと出た言葉は、これだった。

『悪いけど、今の凛さんには平田君の優しさが必要だと思った!信じないなら、最後に聞かせてやるよ』

まっつんは、凛達と離れた場所に居たようだった。さっきまでの静けさと変わった。

『凛さん、僕が支えるよ』

『凛ちゃん、そんなに苦しまないでいいの』

『あー、あー、私、私ね』

凛が、子供みたいに泣いてる。

『大丈夫だよ、凛さん』

『大丈夫、大丈夫』

『私、私、いつかは、こうなるってわかってた。だけどね、だけどね。こんな終わり方は嫌だったのー』

泣き崩れてる凛が、浮かんできて…。俺の目から涙がポトリと流れてくる。

『聞こえたか?』

また、静かになった

「だから…」

『拓夢、二度と凛さんに会うな!』

「何で、まっつんに…」

『もう、凛さんに絶望を与えてやるなよ!』

まっつんは、怒りを通り越していた気がする。

『これ以上、絶望したら凛さん。本当にいなくなっちゃうから』

まっつんは、そう言って鼻をすすってる。

『もう、凛さんの人生にかかわるな!』

「ふざけ」

ふざけんなって言おうとした俺にまっつんがこう言った。

『運命を変えたのは、お前だから…』

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

90日間の恋人【完結】

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:12

東ノ村の若妻・熟妻

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:30

恋文ーあなたは誰?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:142pt お気に入り:64

責任を取って結婚?喜んで!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:248pt お気に入り:1,289

義兄のために私ができること

恋愛 / 完結 24h.ポイント:170pt お気に入り:123

婚約者の彼から彼女の替わりに嫁いでくれと言われた

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:12,882pt お気に入り:397

僕の妻には好きな人がいます  あなたが好きな人は誰ですか

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,681pt お気に入り:10

【本編完結】旦那様、政略結婚ですので離婚しましょう

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,334pt お気に入り:6,833

処理中です...