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拓夢の話8
待っていた人
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俺は、最終電車に乗って家に帰ってきた。
「たっちゃん」
「ごめん、遅くなって」
家の前で、美紗が待っていた。そう、さっきの電話は美紗だった。
「ごめんね、拓夢。拓夢にはもう会わないからだから、幸せでね!だけど、もう、許さないでしょ?」
さっき電話で、そう言われて俺は、美紗を求めていた。許すとか許さないとかと違う気がした。もう、誰でもよかったのかも知れない。心の痛みを拭ってくれるなら…。
「入ろうか」
「うん」
俺は、玄関の鍵を開けて美紗を中に入れた。
「たっちゃん、ありがとう」
入った瞬間、美紗に抱き締められる。もう、どうでもいいや!頭の中から、何もかも消せるなら…。鍵を閉めた。
「美紗」
俺は、美紗を抱き締める。玄関で、靴を脱いでそのまま数歩歩いて美紗を廊下に押し倒した。あの日、凛と重なりあった洗面所が目に入る。俺は、無視するように美紗にキスをする。
「たっちゃん、いいよ」
頬に手を当てられる。大丈夫出来るから…。もう、凛なんか忘れてしまえばいい。美紗の膝丈のスカートに手を入れる。
「たっちゃん」
「美紗…」
悲しみや苦しみや怒りの沸き上がったぐちゃぐちゃな感情で、美紗を求める。シャツを脱ぎ捨てて、カチャカチャと、ベルトを外して…。
「あれ?」
出来ないのは、何でだ!
「もう、何でよ」
美紗が、怒って起き上がると、玄関に向かって歩いて行こうとする。
「待ってって、美紗」
俺は、美紗の腕を掴んだ。
「何で?何で?出来ないのよ」
「待てって!すぐ、なるから!大丈夫だから」
美紗は、俺の顔をジーと見つめる。
「美紗」
俺は、美紗の手を握りしめる。
「本当に出来るの?」
美紗は、小さな声で囁いてきた。
「大丈夫だから」
ピンポーン
誰かがインターホンを鳴らしてる。
「隣の人かも」
ピンポーン
「出たら?」
ピンポーン
「ごめん!待ってて」
俺は、しつこいインターホンに出た。俺の家のインターホンは、電話みたいになっているタイプだから美紗には何も聞こえなかった。
『星村さん』と言われた声に、誰がそこにいるのかすぐにわかった。その声が、かすかに震えてるのを感じる。出たい!会いたい!顔が見たい。俺の胸の中に凛が広がってく。『幸せでした』と言われて、俺は凛に会わなくちゃいけないと思った。急いで、玄関に向かって鍵を開けにいく。
美紗に声をかけられて、返事をした。美紗が、リビングに繋がる扉を閉めたのを見た瞬間に玄関の鍵を開けていた。
凛の姿を見た瞬間、俺は凛を酷く傷つけたのがわかった。あの日、赤ちゃんの事で苦しんでないていた凛がそこにいた。剥き出しになったのがわかった。俺が、包んだ凛の痛みを…。俺は、剥がしたんだ。
「たっちゃん」
「ごめん、遅くなって」
家の前で、美紗が待っていた。そう、さっきの電話は美紗だった。
「ごめんね、拓夢。拓夢にはもう会わないからだから、幸せでね!だけど、もう、許さないでしょ?」
さっき電話で、そう言われて俺は、美紗を求めていた。許すとか許さないとかと違う気がした。もう、誰でもよかったのかも知れない。心の痛みを拭ってくれるなら…。
「入ろうか」
「うん」
俺は、玄関の鍵を開けて美紗を中に入れた。
「たっちゃん、ありがとう」
入った瞬間、美紗に抱き締められる。もう、どうでもいいや!頭の中から、何もかも消せるなら…。鍵を閉めた。
「美紗」
俺は、美紗を抱き締める。玄関で、靴を脱いでそのまま数歩歩いて美紗を廊下に押し倒した。あの日、凛と重なりあった洗面所が目に入る。俺は、無視するように美紗にキスをする。
「たっちゃん、いいよ」
頬に手を当てられる。大丈夫出来るから…。もう、凛なんか忘れてしまえばいい。美紗の膝丈のスカートに手を入れる。
「たっちゃん」
「美紗…」
悲しみや苦しみや怒りの沸き上がったぐちゃぐちゃな感情で、美紗を求める。シャツを脱ぎ捨てて、カチャカチャと、ベルトを外して…。
「あれ?」
出来ないのは、何でだ!
「もう、何でよ」
美紗が、怒って起き上がると、玄関に向かって歩いて行こうとする。
「待ってって、美紗」
俺は、美紗の腕を掴んだ。
「何で?何で?出来ないのよ」
「待てって!すぐ、なるから!大丈夫だから」
美紗は、俺の顔をジーと見つめる。
「美紗」
俺は、美紗の手を握りしめる。
「本当に出来るの?」
美紗は、小さな声で囁いてきた。
「大丈夫だから」
ピンポーン
誰かがインターホンを鳴らしてる。
「隣の人かも」
ピンポーン
「出たら?」
ピンポーン
「ごめん!待ってて」
俺は、しつこいインターホンに出た。俺の家のインターホンは、電話みたいになっているタイプだから美紗には何も聞こえなかった。
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美紗に声をかけられて、返事をした。美紗が、リビングに繋がる扉を閉めたのを見た瞬間に玄関の鍵を開けていた。
凛の姿を見た瞬間、俺は凛を酷く傷つけたのがわかった。あの日、赤ちゃんの事で苦しんでないていた凛がそこにいた。剥き出しになったのがわかった。俺が、包んだ凛の痛みを…。俺は、剥がしたんだ。
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