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拓夢の話7

晩御飯

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凛は、手際よく料理を作っていく。俺は、ダイニングテーブルに邪魔にならないように座った。凛が、帰ったら相沢さんに連絡するかな…。もう、進んで行く事を決めた。凛に打ち明けられたから…。

50分程して、凛は料理をテーブルに持ってきてくれる。

「食べよう」

「うん」

向かい合わせで座る。

『いただきまーす』

凛は、煮込みハンバーグを作ってくれていた。

「めちゃくちゃうまい」

「本当に?」

「本当に!」
 
旦那さんが、羨ましいと思った。ハンバーグに味噌汁にサラダにご飯。ハンバーグには、目玉焼きまでつけてくれていた。

「凛は、料理上手だな」

「それしか、する事ないから…」

「そんな事ないだろ?忙しいのに、頑張ってるんだろ?」

「頑張ってないよ!何も…」

「頑張ってるよ!凛は…。すげー、頑張ってる」

俺は、凛に笑顔でそう言った。

「ありがとう」

「すぐ、泣かないでよ」

凛は、すぐに泣いちゃうから俺まで悲しくなってくる。

「ごめんね、拓夢」

「ううん」

いつかは、別れなきゃいけないのはわかってる。この関係を永遠に続けられないの何てわかってる。それでも、一緒に抱き合う事が出来る間は、俺は凛の悲しみを一つでも減らしてあげたいと思ってるんだ。

「凛にとってのスーパーは、幸せな場所じゃないんだよな」

「そうかもね」

「だから、平田さん見つけて嬉しかったのか?」

「そういうのじゃないけど…。ただ、凛君の働いてる時間に私が買い物に行ってて!ほら、昼間や夕方って子連れが多かったりするから…。だから、夜とか夜遅くとかに買いに行ってて!それで、見つけたのが凛君だったってだけで」

「でも、平田さんに救われてたんだろ?凛は、ずっと…」

「うん、何て言うか癒しだったの。砂漠の中にあるオアシス的な感じかな?」

「へー。じゃあ、平田さんに告白されて嬉しかったんだー」

俺は、嫉妬がバレないように淡々と話す。だって、俺は凛のオアシス的な存在にはなれない気がしたから…。

「どうなんだろうね?嬉しいってよりも、驚いたかな…。後、やっぱり凛君は若いから!若くて無知な部分たくさんあるから…。私は、凛君とはどうこうならないよ!拓夢が、心配してるような事は起きないから」

「別に、何も心配してないけど」

俺は、わざとそう言ってハンバーグを食べる。

「だから、凛君にヤキモチ妬かなくて大丈夫だから」

「妬いてないから」

凛は、クスクス笑ってた。人間って、おかしな生き物だよな!一つでも、自分と似てる場所があればすぐに惹かれちゃったり同士だって勘違いする。だから、俺も凛に惹かれたんだよな!誰もが、驚くぐらい早いスピードで、恋に落ちたんだよな!

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