上 下
146 / 646
拓夢の話7

晩御飯

しおりを挟む
凛は、手際よく料理を作っていく。俺は、ダイニングテーブルに邪魔にならないように座った。凛が、帰ったら相沢さんに連絡するかな…。もう、進んで行く事を決めた。凛に打ち明けられたから…。

50分程して、凛は料理をテーブルに持ってきてくれる。

「食べよう」

「うん」

向かい合わせで座る。

『いただきまーす』

凛は、煮込みハンバーグを作ってくれていた。

「めちゃくちゃうまい」

「本当に?」

「本当に!」
 
旦那さんが、羨ましいと思った。ハンバーグに味噌汁にサラダにご飯。ハンバーグには、目玉焼きまでつけてくれていた。

「凛は、料理上手だな」

「それしか、する事ないから…」

「そんな事ないだろ?忙しいのに、頑張ってるんだろ?」

「頑張ってないよ!何も…」

「頑張ってるよ!凛は…。すげー、頑張ってる」

俺は、凛に笑顔でそう言った。

「ありがとう」

「すぐ、泣かないでよ」

凛は、すぐに泣いちゃうから俺まで悲しくなってくる。

「ごめんね、拓夢」

「ううん」

いつかは、別れなきゃいけないのはわかってる。この関係を永遠に続けられないの何てわかってる。それでも、一緒に抱き合う事が出来る間は、俺は凛の悲しみを一つでも減らしてあげたいと思ってるんだ。

「凛にとってのスーパーは、幸せな場所じゃないんだよな」

「そうかもね」

「だから、平田さん見つけて嬉しかったのか?」

「そういうのじゃないけど…。ただ、凛君の働いてる時間に私が買い物に行ってて!ほら、昼間や夕方って子連れが多かったりするから…。だから、夜とか夜遅くとかに買いに行ってて!それで、見つけたのが凛君だったってだけで」

「でも、平田さんに救われてたんだろ?凛は、ずっと…」

「うん、何て言うか癒しだったの。砂漠の中にあるオアシス的な感じかな?」

「へー。じゃあ、平田さんに告白されて嬉しかったんだー」

俺は、嫉妬がバレないように淡々と話す。だって、俺は凛のオアシス的な存在にはなれない気がしたから…。

「どうなんだろうね?嬉しいってよりも、驚いたかな…。後、やっぱり凛君は若いから!若くて無知な部分たくさんあるから…。私は、凛君とはどうこうならないよ!拓夢が、心配してるような事は起きないから」

「別に、何も心配してないけど」

俺は、わざとそう言ってハンバーグを食べる。

「だから、凛君にヤキモチ妬かなくて大丈夫だから」

「妬いてないから」

凛は、クスクス笑ってた。人間って、おかしな生き物だよな!一つでも、自分と似てる場所があればすぐに惹かれちゃったり同士だって勘違いする。だから、俺も凛に惹かれたんだよな!誰もが、驚くぐらい早いスピードで、恋に落ちたんだよな!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。

星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。 グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。 それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。 しかし。ある日。 シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。 聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。 ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。 ──……私は、ただの邪魔者だったの? 衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。 裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。 ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

【完結】冷遇・婚約破棄の上、物扱いで軍人に下賜されたと思ったら、幼馴染に溺愛される生活になりました。

えんとっぷ
恋愛
【恋愛151位!(5/20確認時点)】 アルフレッド王子と婚約してからの間ずっと、冷遇に耐えてきたというのに。 愛人が複数いることも、罵倒されることも、アルフレッド王子がすべき政務をやらされていることも。 何年間も耐えてきたのに__ 「お前のような器量の悪い女が王家に嫁ぐなんて国家の恥も良いところだ。婚約破棄し、この娘と結婚することとする」 アルフレッド王子は新しい愛人の女の腰を寄せ、婚約破棄を告げる。 愛人はアルフレッド王子にしなだれかかって、得意げな顔をしている。

処理中です...