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凛の話7

存在…

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リビングに戻ると、ソワソワする。さっきから、拓夢に早く会いたい。ドキドキをより強く感じたのは、さっきだったと思う。傘で顔を隠して、キスをした。産まれて一度もそんな事したことなかった。でも、拓夢は私の知らない世界を教えてくれる。

私は、さっきの鞄を、やめた。撥水のされたバックに変えた。本当に近所にお出掛けの格好になっちゃった。でも、仕方ない。玄関に行って、靴を取り替える。今から、また雨が降る。赤色のレインブーツを靴箱から出して履く。私は、玄関の鍵をかけて歩き出す。さっきと違って、大好きな虹色の傘を持った。もう、雨が少し降っていた。この傘を買ったのは、龍ちゃんだった。

恥ずかしいけど、この傘をさすと龍ちゃんとの付き合いたてのあの日が浮かんでくる。考えたら、傘って台風の日や風の強い日に使わない限り、よくもつよね!これは、13年以上使ってるわけだし。顔が綻ぶから、傘で隠して歩く。

私は、龍ちゃんがこの傘を差し出したあの日を思い出してニコニコする。

あれは、付き合って三回目のデートだった。複合施設の中にある映画を観て、帰る時だった。

「雨ですよ!龍次郎君」

「ですね、凛ちゃん」

私達は、まだぎこちなかった。

「濡れるの嫌だし!雨は、嫌いだから!やむまで待ちましょう」

「ちょっと、ちょっと待ってて下さい」

龍ちゃんは、次の場所を予約していたからか…。急いで、走って消えていった。20分ぐらい待ったかな?
もう、立ってるのも疲れてきて!しんどくて、戻ろうかな?って思った時だった。

「はぁ、はぁ、はぁ。すみません」

そう言って、龍ちゃんは戻ってきた。

「もう、戻るか帰るかしようと思った!足が疲れちゃったから」

私は、唇を尖らせて龍ちゃんに言った。

「これ、買いに行ってて」

そう言って、差し出してきたのが、この虹色の傘だった。

「凛ちゃんが、雨が好きになれたらいいと思ったから…」

「フフフ、おもしろい人ですね」

私は、それをきっかけに龍ちゃんを凄く好きになった。あれから、雨が大好きになった。この傘を広げて、街を歩けるから…。

やっぱり、私の中で龍ちゃんは絶対に一番だって気づく。それは、重ねた経験と増えた想い出。私の持ってるもの一つ、一つにも、龍ちゃんがいて想い出がある。

この赤いレインブーツだって、そう。

「レインブーツ買おうかなー」って話した時に龍ちゃんが、仕事の帰り道にたまたま通りすぎたお店がレイングッズ並んでたよって教えてくれて、その週の休みに買いに行ったんだ。

私の持ち物のほとんどには龍ちゃんが存在してる。
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