124 / 646
凛の話6
着替えよう
しおりを挟む
暫く、泣きながら歌っていたけれど…。私は、立ち上がった。シンクの中に広がる破片を片付ける気持ちが湧かなくて寝室に行く。
「どれにしようかなー」
クローゼットの中から、服を選ぶ。ふと目についたのは、天色(あまいろ)のワンピースだった。
「あー、これ懐かしい」
赤ちゃんが出来なくて追い詰められていた昨年夏!二人で、買い物へ行った。龍ちゃんは、恥ずかしそうに服屋さんについてきた。
「あー!!」
龍ちゃんは、突然大きな声を出した!私は、服を選ぶのをやめて龍ちゃんを見つめた。その視線の先にマネキンが着ていたのがこのワンピースだった。
「あの、これ、これ!これ、どこにありますか?」
興奮して、龍ちゃんは店員さんに聞いていて、その場所に案内されていた。そして、私の場所にやってきてこう言ったんだ。
「凛、初めてデートした時の空の色みたいなワンピースみつけちゃった」
キラキラした目で渡された。
「着て欲しいの?」
「凛が、今日みたいに落ち込む日があったら着て欲しい。二人で笑うだけで、ただ、幸せだった日々を思い出して欲しい。駄目かな?」
「着るよ」
私は、天色のワンピースを取り出した。
「龍ちゃん、着るよ!私、今日…」
落ち込んでるから、着る。龍ちゃんが、そう言ってくれたから…。
私は、ワンピースに着替える。13年間、私達には重ねた時間があって、それは絶対揺るがない自信がある。それだけじゃない。付き合ったあの日々だって、誰にも壊されない。私と龍ちゃんには、他人にはわからない大切な時間がある。他人には、壊せない時間がある。
そのワンピースを着るだけで笑顔になれた。化粧をさっと手直しした。必要なのは、昨日の鞄に入ってるから…。
「龍ちゃん、ありがとう」
私は、寝室を出た。キッチンでスマホを取る。シンクを見つめたけど、やっぱり洗う気にはなれなかった。玄関に行って、鞄を変える為に戻ってきた。
「天気予報見とかなきゃ」
小さめのバックから、四角いトートバッグに変える。どうやら、午後から雨が降りそうだったから…。折り畳みの傘をいれた。
さっさと終わらせて、拓夢と晩御飯食べたら帰ってこよう!今日は、龍ちゃんとのこの家で過ごしたい。そう決めたら、足取りは軽くなった。
靴を履いて、玄関を出て鍵を閉めた。近所の人がいないようだったから、早めに歩いた。龍ちゃんが言ったから、バレないようにって…。こんなワンピースを着てたら、変な噂をたてられてしまうかもしれない。
私は、急ぎ足で歩いた。
あっ!靴、変えてくるの忘れちゃった。
黒のエナメル素材で、リボンがついてるデザインだから、拓夢に履かないようにって言われてたんだった。
戻るのも、嫌だからそのまま行こう。私は、急いで駅に向かった。
「どれにしようかなー」
クローゼットの中から、服を選ぶ。ふと目についたのは、天色(あまいろ)のワンピースだった。
「あー、これ懐かしい」
赤ちゃんが出来なくて追い詰められていた昨年夏!二人で、買い物へ行った。龍ちゃんは、恥ずかしそうに服屋さんについてきた。
「あー!!」
龍ちゃんは、突然大きな声を出した!私は、服を選ぶのをやめて龍ちゃんを見つめた。その視線の先にマネキンが着ていたのがこのワンピースだった。
「あの、これ、これ!これ、どこにありますか?」
興奮して、龍ちゃんは店員さんに聞いていて、その場所に案内されていた。そして、私の場所にやってきてこう言ったんだ。
「凛、初めてデートした時の空の色みたいなワンピースみつけちゃった」
キラキラした目で渡された。
「着て欲しいの?」
「凛が、今日みたいに落ち込む日があったら着て欲しい。二人で笑うだけで、ただ、幸せだった日々を思い出して欲しい。駄目かな?」
「着るよ」
私は、天色のワンピースを取り出した。
「龍ちゃん、着るよ!私、今日…」
落ち込んでるから、着る。龍ちゃんが、そう言ってくれたから…。
私は、ワンピースに着替える。13年間、私達には重ねた時間があって、それは絶対揺るがない自信がある。それだけじゃない。付き合ったあの日々だって、誰にも壊されない。私と龍ちゃんには、他人にはわからない大切な時間がある。他人には、壊せない時間がある。
そのワンピースを着るだけで笑顔になれた。化粧をさっと手直しした。必要なのは、昨日の鞄に入ってるから…。
「龍ちゃん、ありがとう」
私は、寝室を出た。キッチンでスマホを取る。シンクを見つめたけど、やっぱり洗う気にはなれなかった。玄関に行って、鞄を変える為に戻ってきた。
「天気予報見とかなきゃ」
小さめのバックから、四角いトートバッグに変える。どうやら、午後から雨が降りそうだったから…。折り畳みの傘をいれた。
さっさと終わらせて、拓夢と晩御飯食べたら帰ってこよう!今日は、龍ちゃんとのこの家で過ごしたい。そう決めたら、足取りは軽くなった。
靴を履いて、玄関を出て鍵を閉めた。近所の人がいないようだったから、早めに歩いた。龍ちゃんが言ったから、バレないようにって…。こんなワンピースを着てたら、変な噂をたてられてしまうかもしれない。
私は、急ぎ足で歩いた。
あっ!靴、変えてくるの忘れちゃった。
黒のエナメル素材で、リボンがついてるデザインだから、拓夢に履かないようにって言われてたんだった。
戻るのも、嫌だからそのまま行こう。私は、急いで駅に向かった。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
貴方だけが私に優しくしてくれた
バンブー竹田
恋愛
人質として隣国の皇帝に嫁がされた王女フィリアは宮殿の端っこの部屋をあてがわれ、お飾りの側妃として空虚な日々をやり過ごすことになった。
そんなフィリアを気遣い、優しくしてくれたのは年下の少年騎士アベルだけだった。
いつの間にかアベルに想いを寄せるようになっていくフィリア。
しかし、ある時、皇帝とアベルの会話を漏れ聞いたフィリアはアベルの優しさの裏の真実を知ってしまってーーー

【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。

人質姫と忘れんぼ王子
雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。
やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。
お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。
初めて投稿します。
書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。
初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
小説家になろう様にも掲載しております。
読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。
新○文庫風に作ったそうです。
気に入っています(╹◡╹)

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる