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凛の話6

他人には、わからない

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送り終わって、キッチンにトボトボ向かった。
冷蔵庫を開けて、右ポケットに置いてある黒豆茶を取り出してコップに注いだ。

カフェインレスばっかり、飲んでる。最近、ようやくカフェインをとるようになって…。
だけど、家では龍ちゃんも巻き込んでカフェインレスだった。

「薄いけど、ちゃんと珈琲だからいいやー」

そう言って龍ちゃんは、笑ったけど、インスタントのカフェインレスは、薄くて美味しくなかった。でも、外で飲むカフェインレスは美味しくて…。それならこっちにしようって、龍ちゃんがネットで調べて、珈琲屋さんのドリップコーヒーって言うのを箱買いするようになった。

「いつかは、こっちに、いつかは、そっちに」

私は、黒豆茶を飲みながらスマホを開いていた。友人達のSNSをスライドさせながらハートをつける。呪文みたいな言葉を話しながら…。
一生かかっても、そっち側に行けないなんてわかってるのに…。
諦めの悪い人間。

「いつか、そっち!いつか、こっち」

ハートをつける指先が震え出した。

【美加、三人目妊娠しましたー!!まさか、40目前に三人目とは!!高齢出産だよー。怖い】

美加が、三人目を妊娠したと報告していた。

【私もだよー!同級生ママとか嬉しすぎるー】

雪乃が、ニコニコマークの絵文字を送っていた。

「いつ、そっちにいけるのよ」

バリン……。

私は、空っぽのシンクに黒豆茶の入ったコップを投げつけてた。

「あー、ああー」

悔しくて、悲しくて、膝から崩れ落ちる。

「何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?」

何でしか出てこない。

「何で?私は無理なのー」

シンク下の扉に頭を擦り付けて泣く。

不倫なんかする弱くて、駄目な人間だからですか?だから、赤ちゃんは私を選んでくれないの?

「あー、あー」

そのままズルズルと滑り落ちて、キッチンの床に寝転がった。

「龍ちゃん、ごめんね」

【大丈夫、大丈夫だから、凛】

龍ちゃんの声が、頭の中で響きわたってる。


「BATENDしか選べない世界で、僕は君に愛を囁いてる。この先に、希望なんてないし。未来だって、明るくないのに…
それでも、君は、僕の手を握り。愛してると笑う。心ばかり、繋がっていく。繋がらない身体を抱えて…また、僕は、今日も君じゃない誰かを抱くんだ。君は、それでも笑うんだ」

私は、ARISAのBATENDを口ずさんでいた。しんの【身体だけが繋がらない】って作品は、今の私達に似てる。龍ちゃんと見たのが、懐かしい。私は、ARISAの曲を何度も口ずさんでいた。





(注)【身体だけが繋がらないは、彩られる作品【仮】の中の物語になります】
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