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拓夢の話5

本性

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美沙は、動揺を隠しきれていなかった。

「拓哉って、誰?」

「違うの、間違ったの拓夢」

「妊娠したとか嘘なんだろ?」

「拓夢」

「そういう嘘!いけないって思わないのか?」

「何で、そんなに怒ってるの?」

当たり前だ!凛が、赤ちゃんが出来ない事に苦しめられてるって言うのに…。美沙は、平然と嘘をついたんだ。

「嘘じゃない」

「じゃあ、証拠見せろよ!俺の子供だったって証拠」

「そんなのあるわけない」

美沙は、そう言って泣き出した。泣きたいのは、俺の方だ。

「下らない嘘つくなら、もっと俺を騙せよ」

涙がボロボロ流れては落ちていく。

「どういう意味?」

「俺、ずっと美沙を愛してたんだよ。彼女に出会うまでずっと…。なのに、何で!何で!そんな女になったんだよ」

美沙は、涙を拭いて立ち上がった。

「いつまでも、いつまでも、青臭いガキみたいな事言ってんなよ」

そう言って、俺の胸ぐらを掴んできた。

「殴るか?殺すか?好きにしろよ」

俺は、美沙に冷たい目を向けていたと思う。

「拓夢、そんな目で何でみるの?」

美沙は、俺の顔を見て怯える。

「二重人格だったりするのか?」

俺は、美沙の事を目を細めて見下ろしていた。

「はあ?もういいわ」

美沙は、人格が変わったように俺を睨み付けて、態度も話し方も180度変わった。そして、どうでもいいという素振りをみせて俺に話しだす。

「拓夢、妊娠してたのは本当よ」

俺は、驚いて美沙を見つめる。

「安心して、拓夢の子じゃないから」

そう言って、不適な笑みを浮かべる。

「誰の子だよ」

俺の言葉に、美沙は俺を見つめて話す。

「川瀬拓哉(かわせたくや)」

その名前に聞き覚えがあった。

「拓夢は、知ってるよね?ルビィのライブにいっつも来てたから」

「あっ!ああー」

川瀬拓哉は、ルビィのバンドのボーカルだった。今は、メジャーデビューをしてMALIAって名前に変わっている。

「川瀬さんって、もう雲の上みたいな人だよな」

俺の言葉に、美沙は遠い場所を見つめながら目を細める。そして、そんな事どうでもいいわって態度をして話しだした。

「拓夢、何で男って避妊しないの?気持ちいいから?それとも、征服した気になるから?」

「知らないよ」

「だよねー!だって、拓夢は、絵に描いたようないい子ちゃんだもんね」

「何なんだよ」

「褒めてるんだよ!ちゃんと避妊する所とか、口でさせない所とか、挿入する時までズボンを脱がない所とか…」

「褒められてるように思えないんだけど」

「そうかな?美沙ね、拓夢だけは違うって信じてたんだよ」

そう言って、美沙はスマホを取り出した。
    
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