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拓夢の話5

すみません

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「先輩、大丈夫ですか?」

「ごめん、仕事に戻らなきゃ」

「大丈夫」

「じゃあ、後で」

「うん」

「すみませんでした」

「いや、いいけど」

「母さんには、手を出させませんので」

「わかった」

俺は、その場を去った。

「ごめんな」

「いえ、知り合いだったんですか?」

「うん」

「へー。あの、おばさんの勘違いか何かですか?」

「野次馬根性ってやつか?」

「いやー、気になるじゃないっすか!あんたとか言って、腕掴んだ所見ちゃったし」

「勘違いだよ!勘違い」

「そうですよね!だって、あんな綺麗な人が悪い事しませんよねー」

溝口は、そう言ってニコッて笑っていた。
悪い事って言うなら、俺と凛はしてる。人の道理に外れている行為だってのは、理解してる。
俺と溝口は、お店に戻って店長さんと日程を決めたりした。

「じゃあ、来週。お願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

俺と溝口は、深々と頭を下げた。

「先輩、お疲れさまでした」

「お疲れさま」

「気になってるんでしょ?さっきの彼女」

「あー、うん」

「行って下さい!俺、車返してきますから」

「悪いな!溝口」

「いいですって」

そう言われて、俺は溝口と別れた。あの公園に向かった。

「誰だよ、あんた!」

デカイ声が聞こえてきて、俺は公園に入った。

「だからー。私、ずっと見てたって言ったよね?」

「美沙、何してんだよ」

見覚えのある背格好と服だった。俺は、走っていく。

「拓夢、何でいるのよ!仕事でしょ?」

「何しようとしてんだよ」

「この女が悪いのよ!この女が、拓夢をとったから」

「違う、凛は何も悪くない」

俺は、暴れる美沙の腕を掴んだ。

「どうしてよ!こいつには、こいつがいるじゃない!だったら、何で拓夢がこの女といなくちゃなんないのよ」

「ごめん、美沙。俺」

「死んでやるから」

美沙は、俺の手を振りほどいて走っていった。

「拓夢」

「ごめん、凛」

俺は、美沙を走って追いかける。何なんだよ。何で、美沙がいるんだよ。

「はぁ、はぁ、はぁ」

「追いかけてこないで」

「はぁ、はぁ、美沙、待ってくれよ」

「嫌よ!どうして?どうして?あんな女を」

「はぁ、はぁ、美沙、俺」

何とか美沙に追い付けそうだ。俺は、その腕を掴んだ。

「何で、何で、何で、あの女なの!美沙より、いいって言うの」

美沙は、その場に崩れ落ちた。

「ごめん、美沙」

「美沙は、拓夢の赤ちゃんがいたんだよ!汚れたんだよ!責任とってよ」

「ごめん」

ごめんしか言えない。

「拓哉は、いつもそうやって…」

拓哉?誰?

「美沙……?」

美沙は、慌てた様子で口を塞いだ。拓哉って、誰?

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