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拓夢の話5

おはよう

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俺は、きっと平田さんに凛を取られたくないんだと思った。平田さんを止める権利は、俺にはないのをわかってるから…。
昨日、ヤキモチを妬いて凛を抱いた。馬鹿だよな!俺は、眠ってる凛を見つめていた。

警察に美沙の被害届出す方がいいのかなー。俺は、頭を掻いて考える。今日、早く終わったら智に連絡してみるかな…。

「ふぁー、うーん」

「おはよう」

「おはよう、早いね」

「うん」

「シャワー入った?」

「昨日、あの後入ったからいいよ」

「それも、そうだね」

俺は、寝起きの凛に抱きついた。

「どうしたの?」

「羨ましいな!旦那さんが…」

「何言ってるの?」

「凛の朝御飯食べれて、好き時にいつでも凛に触れられて」

「拓夢」

「凛の家庭を壊したいとか、そう言うの思ってないよ!ただ、旦那さんが羨ましいなって思ったんだ」

「拓夢」

「着替えるよ」

俺は、立ち上がって洗面所に行って顔を洗った。旦那さんより、出会うのが早かったらよかった。って言いそうになった自分に驚いた。安っぽいメロドラマの台詞だった。出会うのが早かったら何て口に出すようになったら、俺は平田さんと同じだ。

鏡の中の自分に少しだけ笑いかけてスーツに着替える。凛と一緒にいるだけでいいじゃないか…。

昨日、俺はまっつんに言われた。
「凛さんといると息が出来るんだろう?」って…。俺は、その言葉に頷いた。どうしたら、凛といれるのかを話してくれた。

「拓夢、時間大丈夫?」

「今、行く」

昨日の話しは、また改めてって事で…。

「遅刻したら、大変だよ」

「わかってる」

「似合うよね!スーツ」

「ありがとう」

凛は、俺の姿を見て笑ってくれる。

「行こうか?」

「うん」

ボストンバックに服をしまった。

「忘れ物ないかな?」

「大丈夫」

「わかった」

そう言って、ホテルを出る。料金を支払って歩き出す。

「それ、どうするの?」

「コインロッカーに預けてから、行くよ」

「それなら、ついてく」

「うん」

凛は、駅のコインロッカーまでついてきてくれる。俺は、鞄を預けた。

「今日は、帰るんだよね?」

「うん、そのつもりだよ」

「だよね!」

「何?帰って欲しくなかった?」

「欲しいわけないよ」

「じゃあ、晩御飯食べない?一緒に…」

「食べる」

「じゃあ、仕事終わったら一緒に食べよう」

「うん」

少しでも長く凛と一緒にいたい。それは、どんな形であっても…。

「凛」

「何?」

「昨日、みんなと話した事があって」

「うん」

「また、ゆっくり聞いて欲しいんだ」

「いいよ」

「凛は、このまま行くのか?」

「いったん、服着替えてからにする」

「わかった!じゃあ、気をつけて」

「うん、じゃあね」

凛は、手を振っていなくなった。俺は、その姿を見つめてから歩き出した。
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