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凛の話5

辛いよね…

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凄い音が静かになった。近所の人が、警察に通報したようだった。

私も拓夢もホッとしていた。殺されなくてよかった。そう思った。

ピンポーン

インターホンが鳴って、拓夢は固まった。私も手が震えそうになるのを押さえる。

「星村さん、おられますか?」と聞こえた声に美沙さんではないのを感じた。

拓夢は、玄関に向かって行く。私は、拓夢が出ていったのを見てから玄関に行く。うっすらと声が聞こえてくる。私は、聞かないようにしていた。拓夢は話し終わったのか入ってきた。
珈琲飲みたいとぎこちなく笑った。
私は、拓夢を抱き締めていた。きっと何かを聞かれて、本当の事が言えなかったのがわかった。

「昨日、彼女とセックスした」とさらりと流れるように言われた事が、少しだけ引っ掛かる。私だって、龍ちゃんとしてるのに…。拓夢は、ズルズルと私の腕から落ちていく。膝から玄関に崩れ落ちて、泣きながら「怖かったんだ」と言った。当たり前だよ!あんなの怖いに決まってる。
拓夢は、その場で土下座をするように泣き崩れてる。私は、拓夢の背中を擦った。

美沙さんを愛していたのがわかる。拓夢も辛かったんだ。

ガタン…。近所の家の音に拓夢はビックリして顔をあげた。さっき話してくれた、松永さんのように拓夢がしてしまう気がした。

「今日は、ずっと一緒にいるから」私は、そう言って拓夢に笑った。

用意するからと拓夢は、ふらふらと立ち上がって消えていった。

私は、立ち上がって拓夢の家のダイニングの椅子に置いた鞄を取りに行く。拓夢は、用意をしてるから、私はまた玄関に戻ってきた。鞄から、スマホを取り出す。手が小刻みに震えてるのを感じて両手でしっかり持った。

【やっぱり、本格的なたこ焼きは最高やでー!凛、何かあったら連絡しろよ!】龍ちゃんが、たこ焼きを食べる写真とメッセージを送ってきてくれていた。

ごめんね!私、殺されてもいいって思っちゃった。龍ちゃんがいるのに、馬鹿だよね。さっき拓夢とした後ろで、般若が見えた。その般若が私と拓夢を殺す気がした。不思議とあの時は、怖くなかった。今になったら、生きていてよかったと強く思ったけど…。
龍ちゃんの事、忘れたら駄目だよ!私は、龍ちゃんにメッセージを送った。【帰ってくるの待ってる】送信。

ニュースにならなくて、よかった。星村拓夢さんの家で何てニュースが流れたら、私の家族も龍ちゃんも龍ちゃんの家族もひっくり返ったはずだ。

拓夢がやってきて、私達は家を出る。さっきの痕跡は、残されたままだった。このままにしてもいいのかな?拓夢は、貴重品とか置いてない?大丈夫?拓夢の姿を見てると話しかけれなかった。私は、黙ってついていくだけ…。

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