上 下
105 / 646
凛の話5

異常…

しおりを挟む
拓夢の手が、ずっと震えてる。インターホンの鳴らし方を聞いていると、どう考えても普通の人間がしてるとは思えなかった。拓夢は、インターホンが聞こえないように私の両耳を塞いでくれる。私は、拓夢にしがみついた。怖い、ただ、ただ、怖い。何がと聞かれたら、この人が家に入ってくるのではないかと思って怖い。

もしも、この人に、何かをされて「皆月凛さんが死亡しました」何てニュースに出たら、龍ちゃんはどう思うのかな?近所の人は、どう思うのだろうか?そう考えてしまう自分は、何て酷い人間なのだろうと思う。私は、それが一番怖いだけ何だなと思う。
だけど、今は、そんな事よりも拓夢の震えを止めてあげたい。そう思った時に、インターホンが鳴りやんだ。よかった。拓夢もホッとしたようだった。私は、拓夢に龍ちゃんではないよと伝えた。拓夢も、凛の旦那さんがそんな事をしないと言ってくれた。拓夢が龍ちゃんを信じてくれた事が凄く嬉しかった。拓夢が頭を優しく撫でてくれるのが嬉しい。こんな風にずっといれたらいいのに…。拓夢は、玄関のチェーンをかけた。その時だった。ピンポーン。また来た。拓夢は、ドアスコープを覗いてる。

「美沙」って言った!元カノだって、教えてくれた。私は、その言葉にまた玄関に座り込んだ。
さっきとは、違ってインターホンを鳴らすだけじゃなくてドアを蹴破りそうなぐらい叩く。拓夢の手が小刻みに揺れてるのがわかって、両手でその手を包み込んだ。

さっきとは、違って向こう側から声をかけてくる。その声に、拓夢は私の隣にしゃがんだ。拓夢の耳にだけ聞こえるような声で話しかける。
「怖い」そう小さく呟いたから、私は拓夢に「大丈夫だよ」って言った。それは、龍ちゃんがいつもくれるみたいな優しい「大丈夫」

そう言ったら、拓夢は私にキスをしてきた。このドアの向こうに、拓夢の元カノがいるのに…。そんな状況なのに、拓夢やめない。
「ここでは、駄目だよ」って言おうとする前に胸を触られる。龍ちゃんとの朝の状態と期待してあれまでポケットにいれてきた私…。もう、私も流れに流れようとしてる。拓夢に、床に押し倒される。私は、拓夢の頬にそっと手を当てる。

ダンダンって叩く音とピンポーンってなるインターホンが、どんどん遠くに聞こえていく。
もっと、真っ白になりたい。私は、拓夢の欲求に答えるように受け入れる。もっと、欲しい。拓夢にもっと求められたい。

ガチャン…。

その音にビックリして声が出た。拓夢は、小さな声で向こうに行こうと言った。私と拓夢は、ゆっくり、ゆっくり四つん這いで歩いていく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貴方だけが私に優しくしてくれた

バンブー竹田
恋愛
人質として隣国の皇帝に嫁がされた王女フィリアは宮殿の端っこの部屋をあてがわれ、お飾りの側妃として空虚な日々をやり過ごすことになった。 そんなフィリアを気遣い、優しくしてくれたのは年下の少年騎士アベルだけだった。 いつの間にかアベルに想いを寄せるようになっていくフィリア。 しかし、ある時、皇帝とアベルの会話を漏れ聞いたフィリアはアベルの優しさの裏の真実を知ってしまってーーー

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。 やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。 お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。 初めて投稿します。 書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。 初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。 小説家になろう様にも掲載しております。 読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。 新○文庫風に作ったそうです。 気に入っています(╹◡╹)

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

処理中です...