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拓夢の話4

崩壊する…

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ガチャン、ダン、ダン…

もの凄い音が、響き渡ったと思ったら静かになった。

「さっきから、うるさいって通報がありましてね」

響き渡る声に、俺は凛と顔を見合わせた。

「もしかして、警察?」

「誰かが呼んだのかも、知れない」

その声が、聞こえた瞬間音は静かになった。俺と凛は、暫く洗面所に隠れていた。ホッとして、腰が抜けた。

「よかった」

「ほんとだね」

ピンポーン

また、インターホンが鳴った。俺は、固まった。

「星村さん、おられますか?」

男の人の声だった。

「開けるよ」

「うん」

俺は、玄関に向かって鍵を開ける。

「はい」

「警察です」

「はい」

「先ほどまで、おられた女性が星村さんの彼女だとおっしゃっているんですが…」

「元カノです」

「そうですか」

警察の人は、何かを考え込んでから息を吐きながらこう言った。

「よろしければ、届け出を出しに来て下さい」

それ以上言わずに、頭を下げていなくなった。俺は、その人がいなくなった後、外に出る。バールのようなものが落ちていたり、ドアにはかなりの凹みがあった。元カノだから、あれしか言えなかったのがわかった。

「拓夢、大丈夫?」

凛が、玄関にやってきていた。

「珈琲飲みに行きたいから、ついてきてくれないか?」

俺は、うまく笑えなかった。玄関に入ると凛は、抱き締めてくれる。

「元カノって言っちゃった。美沙を他人みたいに言っちゃった。昨日、彼女とセックスしたのに」

俺は、玄関で膝から崩れ落ちた。

「だって、怖かったんだ!どうしようもなく怖くて怖くて堪らなかったんだ。また、来たらと思ったら頭がおかしくなりそうだったんだ。凛、俺、最低だよな…」

「ううん。誰だって怖いよ!拓夢だけじゃない。私だって、そう言うよ」

凛の優しさが胸を締め付けてくる。

「凛。あー、あー、あー」

頭を抱えながら土下座するみたいに、俺は泣き崩れる。

「大丈夫、拓夢は悪くないよ」

愛した人を警察に渡してしまった。

「あー、あー、ごめんなさい、ごめんなさい、あああ」

「大丈夫、大丈夫だよ」

凛は、俺の背中を擦ってくれてる。

ガタン…。その音に、ビクッとして俺は振り返った。たった一回で、こんなにも恐怖が体に染み付いてる。

「拓夢の家じゃないよ」

「凛、怖い、怖い」

俺は、歯をガタガタ鳴らしながら凛にしがみついた。松永先輩が、自殺しようとした気持ちがわかる。怖くて、怖くて、堪らない。凛がいなかったら、俺だって…。

「大丈夫、今日は、ずっと一緒にいるから」

そう言って、凛が抱き締めてくれる。

「ホテル行こう」

「うん」

「用意するから」

「うん」

俺は、そう言ってふらふらしながら立ち上がった。この家には、いれない。この家には…。
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