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拓夢の話4

沼に沈む…

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「凛」

俺は、凛の輪郭をなぞるように顔を撫でながら言った。

「拓夢」

凛の潤んだ瞳(め)が、俺を見つめてくる。俺と凛の唾で濡れた唇がよけいに堪らなくて…。俺は、凛にキスをした。

「もう、我慢出来ない」

さっき途中で止めたズボンのベルトを外す。

「凛、優しくするから」

俺は、そう言って凛のスカートの中に手を入れる。

「んんっ」

凛が好きなとこを俺は、わかってる。

「ハァッ」

凛の声と腰をくねらせながら感じてる姿が、さらに興奮する。俺は、避妊具を凛の右手から受け取ってつける。

「拓夢、忘れよう」

「うん」

何も考えたくなくて、何もかも忘れたくて、俺は夢中で凛を抱いた。

『アッー、アアッ』

二人の声が、重なりあって果てた。俺は、避妊具をゴミ箱に捨てる。

「はぁ、はぁ、凛。頭が痺れた」

「私も、真っ白になった」

凛を抱き締めて、隣に寝転がった。

『はぁ、はぁ、はぁ』

二人の息が重なる。

ガッチャン…ゴンッ…

物凄い音が響いた。

「何?」

「見てみる」

俺は、玄関を少しだけ覗いてみる。

「凛、ヤバイ」

「どうしたの?」

「兎に角、服を着て」

俺は、凛に服を着るように言った。凛は、服を着る。

「凛、今から話す事をよく聞いて」

「うん」

「チェーンが閉まってるから大丈夫だと思うんだけど…。郵便受けが壊された」

「さっきの音って」

「壊れた音」

俺の言葉に、凛は驚いて固まっている。

「拓夢、彼女」

「いずれ、入ってくるかも知れない」

「どうするの?」

「警察に言うのがいいのかもしれないけど…」

「言いたくないのね」

そう言って、凛は俺の頬を優しく撫でてくれる。

「女物の靴があるのは、何で?拓夢ー。いるんでしょ?わかってるのよ」

ガンガン、ガチャン、ガチャン…

美沙が、どうにか開けようとしてるのがわかる。

「もしも、美沙が入ってきたら逃げて!凛に、迷惑かけたくない」

「こんなに震えてるのに?」

そう言って、凛は俺の両手を握りしめてくれる。

「凛が、怪我でもしたら申し訳ないから」

俺の目から涙がポロポロと流れてくる。凛は、その涙を優しく拭ってくれる。

「わかった!逃げる」

凛は、そう言って薄く笑ってくれる。

ガチャン、ガチャン、ガチャン…

さっきより、音が大きくなる。怖い、怖くて堪らない。正体のわからない怪物が、扉をこじ開けようとしてる気がする。

ガチャン、ガチャン、ガチャン、ガンガン、ガンガン。

「拓夢、悲しいんだね」

凛は、そう言って俺を優しく抱き締めてくれる。智が言った言葉が、真実だった。俺は、美沙の何も知らなかったんだ。
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