上 下
74 / 646
凛の話4

心だけは繋がって…

しおりを挟む
「凛、愛してる」

引き寄せてキスをした唇を離して龍ちゃんは、そう言った。

「私も…」

セックスなんてしなくていいから、一緒に居て。
お願い、龍ちゃん……。

龍ちゃんは、首筋に舌を這わせてくる。

「んんっ」

感じてるフリをする。だって、頭の中を【赤ちゃん】ばっかり横切って集中出来ないの

「凛」

「こうして」

「わかった」

龍ちゃんは、私の言った通りに触ってくれる。少しだけ、頭の中から追い出せそうな気がしたけど無理だった。

「凛」

「龍ちゃん」

龍ちゃんが、最後まで果てれたからよかったよ。

「ちゃんと鍛えなきゃ駄目だよな!じゃなかったら、妊娠させる能力ないよな!俺」

龍ちゃんは、息を整えながらそう話した。

「そんなの関係ないよ」

「そうかな?」

「そうだよ!出来ない理由を探すのは、嫌だよ」

「ごめんな、凛」

龍ちゃんは、そう言って私を抱き締めてくれる。出来ない理由ばっかりを並べるのは、もう充分すぎるぐらいやったんだよ。その度に、傷つけ合うのもやったんだよ。だから、もうそういうのはしたくないよ!龍ちゃん…。

「龍ちゃん」

「何?」

「セックスが傷つけ合う原因になるなら、私は無くてもいいよ!龍ちゃんとは…」

「それって、他人としてこいって意味?」

「違う!何で、そうなるの」

違わない。龍ちゃんが合ってる。

「セックス無くなるのは、まだ耐えられないよ」

「でも、今までしなかった事の方が多かったでしょ?」

「それは、今までだろ?俺は、凛と全部繋がり合いたいよ。心も体も…。だから、無くすのは無理だよ」

「わかった」

龍ちゃんがそうしたいなら、構わないよ。私が我慢すればいいだけだから…。

「したくなかった?」

「そうじゃない」

「じゃあ、どういう意味だった?」

「龍ちゃんとすると赤ちゃんが欲しいでいっぱいになって…」

気持ちよくないなんて言えなかった。

「それが、辛いの?」

「時々ね」

毎回なのに、嘘をついた。

「知らなかった、ごめんな」

「ううん」

愛してるから、抱き締められて謝られたら全部許してしまう。本当は、嫌で堪らなくても…。龍ちゃんが、望むなら叶えようとしてしまう。

「凛、少しだけ寝るよ」

「うん」

「凛は?」

「眠るまで、隣にいる」

「わかった」

私は、龍ちゃんの頬を撫でる。こんなに愛しくて、こんなに大切なのに…。どうして、赤ちゃん出来ないのかな?

龍ちゃんは、目を閉じた。すぐに眠ってしまう癖は、相変わらずだ。
私は、龍ちゃんの胸に顔を埋めた。

「龍ちゃん、ごめんね」

そう言いながら私は泣いていた。

「こんなに愛してるのに、龍ちゃん。ごめんね。私、いい奥さんになれなくなったの……ごめんね。龍ちゃん」

私は、龍ちゃんを抱き締めて泣いていた。赤ちゃんが出来ない事が、どうしてこんなにも私を苦しめるのかな…。

    
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

先生、生徒に手を出した上にそんな淫らな姿を晒すなんて失格ですよ

ヘロディア
恋愛
早朝の教室に、艶やかな喘ぎ声がかすかに響く。 それは男子学生である主人公、光と若手美人女性教師のあってはならない関係が起こすものだった。 しかしある日、主人公の数少ない友達である一野はその真実に気づくことになる…

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫

紫崎 藍華
恋愛
政略結婚だったにも関わらず、スティーヴンはイルマに浮気し、妻のミシェルを捨てた。 スティーヴンは政略結婚の重要性を理解できていなかった。 そのような男の愛が許されるはずないのだが、彼は愛を貫いた。 捨てられたミシェルも貴族という立場に翻弄されつつも、一つの答えを見出した。

十年目の離婚

杉本凪咲
恋愛
結婚十年目。 夫は離婚を切り出しました。 愛人と、その子供と、一緒に暮らしたいからと。

私をもう愛していないなら。

水垣するめ
恋愛
 その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。  空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。  私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。  街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。  見知った女性と一緒に。  私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。 「え?」  思わず私は声をあげた。  なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。  二人に接点は無いはずだ。  会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。  それが、何故?  ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。  結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。  私の胸の内に不安が湧いてくる。 (駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)  その瞬間。  二人は手を繋いで。  キスをした。 「──」  言葉にならない声が漏れた。  胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。  ──アイクは浮気していた。

50歳前の離婚

家紋武範
恋愛
 子なしの夫婦。夫は妻から離婚を切り出された。  子供が出来なかったのは妻に原因があった。彼女はそれを悔いていた。夫の遺伝子を残したいと常に思っていたのだ。  だから別れる。自分以外と結婚して欲しいと願って。

【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!

ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

処理中です...