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凛の話3

赤ちゃん欲しい?

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龍ちゃんは、コーヒーを持ってきて私の隣に座った。

「凛、赤ちゃん欲しいんだよね」

「どうして?」

「さっきの由美ちゃんの話」

「あー、突然思い出しただけだよ」

「あの日、帰ってきた凛は、止められないぐらい泣いてただろ?俺、覚えてるよ!凛が、苦しんで泣いていたの」

龍ちゃんは、そう言ってコーヒーをテーブルに置いて私の手を握りしめてきた。

「そんな事あったかな?忘れちゃったよ」

「占い師に会いに行かされた事も、この本がいいって読んだ事も、治療を進められた事も…。俺、全部覚えてるよ」

そう言って龍ちゃんは、私の頬に手を当てる。

「凛が、たくさん傷ついて、たくさん泣いたの俺わかってる。だけどね、俺もね!赤ちゃん諦められないんだ。ごめんな!凛」

「ううん」

私と龍ちゃんは、もう何度話し合ってきただろうか…。その度に、こんなに泣かないといけないぐらい傷ついてきた。

「だから、お医者さんには駄目だって言われたかもしれないけど…。俺、もう少しだけやってみたいんだ。駄目かな?」

私は、首を横に振った。

「年内だけでもいい。駄目なら、きっぱり諦めるから…」

「わかった」

「ごめんな!凛」

「ううん」

もしも、赤ちゃんが自然に出来てくれたら…。この苦しみも痛みも消えてしまうんだと思う。でも、赤ちゃんを授かれなかったら?私と龍ちゃんは、いつまでこの気持ちを抱えなくちゃならないの?乗り越えたような気がしたって、子供を持てなかった苦しみや痛みは一生引きずるのかな?

子孫繁栄能力がなかった事をずっと責めるのかな?

「凛!一番辛いのは凛だってわかってるよ!なのに、ごめんな」

「いいの、気にしないで」

「泣かないで、凛」

龍ちゃんは、そう言って私を抱き締めてくれる。
苦しくて、痛くて、悲しい。

「凛」

愛してるなら、もうやめて!純愛ぐらいの関係に戻らない?龍ちゃんは、私の心の声なんか聞いてない。

「愛してるよ」

「私もだよ」

苦しい程に、キスをされる。こう言うのいらないんだよ……龍ちゃん。

「しよう」

耳元でそう言われて、頷いた。頭の中の小さな私は、喜んで拳をあげる。
【赤ちゃん、赤ちゃん、赤ちゃんが欲しい】そう言いながら跳び跳ねてるのを感じる。私は、龍ちゃんに寝室に連れていかれる。
龍ちゃんには、出来ないのをわかってる。
頭の中の私を黙らせる事なんか出来ない。

「凛とずっと一緒にいたい」

龍ちゃんは、そう言って私をベッドに倒した。静まって……私。

【赤ちゃん、赤ちゃん!妊娠、妊娠、妊娠】

私は、頭の中を黙らせたくて龍ちゃんの首に手を回して引き寄せる。
    
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